実像の脚跡

桜最中

終わりと始まり

「くそ、俺たちのサッカーはここで終わりかよ。」

競技場の更衣室は荒れていた。負けた。僕たちのサッカーは全国まであと少しのところで終わってしまった。自分でもわかっていた。その無力感からだった。

「まだだ皆、次は3位決定戦なんだそこが一旦のゴールだろ。」

僕も思う。準決勝あと1点それさえ外さなければ大きく結果は変わっていたかもしれない。今さら嘆いたって変わらない。

「いいよなぁ。そうやって前を向けるやつは。」

そう言ってGKは出て行った。

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数日後

__________

「さあ、僕らの順位はここで決まる。悔しさをぶつけろ。悲しみを、そしてサッカーを楽しもうぜ。」

指揮をあげようとするキャプテンとして。ここにいるのは小学生から同じチームの仲間たちだ。ここまでついてきてくれてありがたい限りだった。

ピィーーーッ

試合開始のホイッスルがなる。

相手ボールから始まる。今ぼくを包み込んでいるのは高揚感と同じ学校の者の歓声である。

「やっぱりサッカーはいいな。」

30分がたつ。試合は不利な状況だ。相手は昨年優勝校だ。こちらはほとんど無名の学校だった。

ピィーーーッ

試合終了の合図がなる。試合は負けだ。しかし悔いはない。すべてをぶつけた。自分の持てる限りの力を出しきった。

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試合終了後の更衣室

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「もう僕たちはこれで引退だ。これからは受験と言う名の大きな試合が始まる。ここでは自分以外すべてを敵と思ってもらってかまわない。」

僕以外は泣いていて悔しみをそとに出していた。

「なあ部長。俺たちは負けたんだ。なんであんたは悔しくないんだ。俺たちのサッカーはここで終わったんだぞ。」

そう言って1人が出ていってしまった。それに続いてどんどんと人が減る。

「おっと忘れ物した。」

そう言って戻ってきたのは副部長だった。その声は唯一残っていた部長には聞こえていなかった。

「そうだな。俺たちのサッカーは確かに終わったよ。悔しく、悲しくないわけないじゃないか。それでも現実にぶち当たっても進むしかないじゃないか。」

それをみた副部長が

「そうだよな。お前がこのチームを9年間引っ張ってきたんだもんな。支えてきたんだもんな。それは俺たちが一番わかってる。だけど相手は強かった。俺たちが止まるのはここじゃない。4位だとりあえず。まずまずじゃないか。ありがとう親友。」

届くこともない言葉を投げ掛け。気づかれないように忘れ物の発酵したユニフォームをもって帰った。

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次の日

_________

「このサッカー部の部長はお前だよな。一通のスカウトが来てるがどうする。」

僕は迷った。高校でもこのチームメンバーからは離れたくない。けどサッカーをするにはそっちの方がいいんじゃないかと葛藤を続けていた。

「もっと時間が欲しいです。考える時間を僕に下さい。」

そういうと先生はこう返した。

「ああ、考える時間は一か月ある。じっくり悩んでくれよ。」

数日後

「聞いたぜお前スポーツ推薦を受けられるんだって。俺もお前に勉強してついていくぜ。」

ありがたい。その言葉で僕の悩みは軽減された。誰も仲間がいない状態でのサッカー。僕にとってはコミニュケーションもまともに取れず挫折するのではないかと思っていた。今までそばで支えていてくれた現在の副部長がいればすぐになじめる気がしたのだ。そうすると。

「俺も、僕も」

サッカー部全員が声をかけてくれた。そこは割かし難しく、こういうものもいた。

「僕は学力的に無理なんで試合の応援は毎回行きますよ。まあただし試合相手にならなければな。」

そうして僕はこういった。

「形は違えどもみんなで戦おう。今度は俺たちが全国を奪い合う枠になるんだ。」

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受験前

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「やれることはやった。スポーツ推薦だしテストはない。面接と実技でどれだけの結果を出せるか。ここで僕の人生が決まるといっても過言ではない。」

そうぶつぶつ言っていた。

「それでは受験番号30035番、出番です。入ってきてください。」

「はい、失礼します。」

「それではいちようテスト内容は現うちのチームのGKとPK対決がメイン、サッカーでの推薦なのでサッカー中心で行きますが、ほかのこともあります。」

「ルールは10発中3発が入ることそうすることで次の試験に進むことができます。それでははじめ。」

どこを狙おうか。目線でばれるかもだから。左向きに蹴ってカーブで右を狙うか。

バシン

そんな小さな音が鳴って、止められたさすがは超有名な高校一筋縄ではいかない。

もう一度今度はもっとカーブをかけよう。そして最後にストレートをしかける。5発目にて

カーン

そんな金属音を出して上にそれていったボールはゴールに入った。やっと1発あと2発は入れなければならない。どうしたもんか。そろそろカーブをやめて普通にやってみるか。

ポスン

そんな音を立ててボールはネットを伸ばす。入った2発連続だった。僕はここでも通用するんだと喜びを感じていた。ブラフは通用した。これからはもうストレートは入らないだろう。ここまでで相手は重心が右向きだと気付いたので、左に早いカーブをかける。ボールは大きく曲がり、ゴールに入った。合格だ。あと2回これも入れて終わってやる。先ほどと同じ方法で2回とも入ったので、合格だった。

今度は何だろうか。そう思いながら次の場所にいった。

「次は面接だ。」

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面接後

_________

「今日はこれで終了です。また明日の予定を発表します。明日は全種目共通実技をします。」

そう放送があった。

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受験後

_________

「お前どうだった。俺は結構余裕があったよ。これまで何ヵ月も勉強したかいがあった。」

そう言って。サッカー部のみんなはいっていた。僕は嬉しかった。まだ絶対に決まっていないけれど、チームでのサッカーを続けられることが。

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