第18話 盗賊団

4台の馬車による商隊がクラークスの街を出る。


最後尾の帆掛け馬車の荷台にアルフレッドとアクセル達が、護衛の兵は各馬車の御者台に各1名、そしてさらに最後尾の馬車の後を2名の護衛が徒歩でついてきている。


道は雪解け水で土がぬかるんでいるので、馬車のスピードは歩くスピードより遅いくらいだ。



2日目、商隊はちょっとした峠にさしかかる。

リブストンへ向かう道はプールズ川に近い所を通るのだけど道も悪いし勾配がある事が多い。馬車だからといって移動時間が短縮できないのはそのためでもある。


峠は本当に大変で、きつめの斜面に差し掛かると全く馬車が動かなくなり、そのたび全員総出で馬車を押す。山頂付近は延々と馬車を押すことになる。

息も絶え絶えで峠を登り切ると、木が刈り取られた広場がありそこでいったん休憩となった。


全員がヘタヘタと地べたに座り込み、僕も馬車のそばの草むらに腰を下ろす。


しばらくして上がった息も落ち着くと、その広場の先には青い空が広がっている事に気づいた。

地平線が見えるかもしれない。

僕はふと立ち上がると、視界が一気に広くなり地平線まで広がる森が現れる。


吸い込まれるような景色に足を進めると、眼下に太陽の反射で輝くプールズ川が現れた。


プールズ川はヨースランドからウエザビー大公国を結ぶ交易の中心ともいえる大河川で、その広い河川には荷物を積んだ川船が2艘ほどリブストン方面に進んでいる。


川を隔てた対岸から遠くの地平線まで続いていると思われた森だが、うっすらとはしているが地平線のあたりで森は終わり、その先に平原らしき大地が確認できた。

そこにも人の暮らしがあるのだろうか?


僕はバーン村という夏でも雪化粧する山脈が見えるとても美しい村にいたけど、ここまで大きく雄大な大地を見るのは生まれてから初めてだ。




しばしの休憩のあと、疲れた体を叩き起こして馬車を動かし峠を下ることとなった。


下りの馬車は逆に木のブレーキを手動で当ててゆっくりと慎重に下っていく事になる。

これも相当重労働のようで、急な場所では完全に車輪を固めてそのまま馬に引かせたりしている。



ようやく坂が平地に変わるという時、突然前方よりが聞こえた。


「賊だっ!」


アクセルが帆馬車の中からそう叫ぶと、馬車の後方を歩いていた護衛の兵2名が前方に走り出す。


「お前らはここで待っていろ。油断はするなよ」

僕とビアンカに向けてそう声をかけて、アクセルは馬車の荷台からさっと飛び降りていった。


前方からは護衛達の張り上げる声が聞こえてくる。前方で何かがあったのは間違いがないようだ。


いてもたってもいられなくなった僕は剣を抜き荷台から降りようとするが、

「カイトさんはそこに居てください。アクセルがいませんので、ここを守る必要があります。」

と、アルフレッドさんに止められた。


確かにアルフレッドさんも、ましてやビアンカは戦えない。その時は僕が戦うしかないのだ。



*****



アクセルは馬車から飛び降りると周りの状況を確認する。

後ろには賊の気配はない。前方では鉄がぶつかる音と幾人もの怒号が聞こえる。


『ここは大丈夫だ。先頭の馬車が狙われたか。』

そう判断すると前方の方に勢いよく駆ける。


少し駆けると前方の馬車の横で3名の警護の兵が賊を相手に応戦しているのが見えた。


「こっちまでは来てないようだな」

側の馬車の上で剣を構えている御者に尋ねる。


「奴らは前の2台を襲っているようです」

「ここは頼む」


再び駆け、応戦する警備兵まで追いつくと「加勢する!」と一声あげてそのまま前にいる盗賊の1人に切り込んだ。


そこにいた盗賊は4人、みな痩せ細っていて質の悪そうな剣は持つが革鎧さえ着ていない。


アクセルに狙われた賊にしてみれば、相対している護衛の後ろから突然もう一人が現れたように感じた。

2台目の馬車を任された盗賊たちは護衛と御者だけしか居ないと、5人で襲いかかったのだが、すぐに2人の増援が駆けつけてきて、すでに一人は切り伏せられていた。


ただでさえ腕の立つ護衛にビビり気味だった上に、突然現れたアクセルは素早く対応が遅れてしまったのだ。


賊の一人はアクセルの剣によって一刀の元に袈裟に切りつけられ、肩口から血を吹き出して倒れる。



これで血まみれの死体が2体になった。どちらも盗賊のものだ。

4対3で盗賊有利に対峙していた形成は一気に3対4になった。


アクセルに切り倒された仲間を見て勝ち目がないと思ったのだろう、盗賊の1人が茂みに向かって駆け出すと、残った2人も慌てて逃げ出そうとする。


しかし一瞬の隙をいくつもの修羅場を潜り抜けてきたアクセルが見逃すはずがない。

すぐに2歩素早く足を進めると、逃げようと後ろを見せた盗賊を一太刀の元に切り伏せる。


残ったもう一人はさらに逃げ出すのが遅く、この一瞬の間に取り残され逃げる手立てがなくなっていた。そこに護衛の兵2人が畳み掛けてあっという間に切り伏せられた。


「が〜〜!」盗賊の断末魔が辺りに響く。


アクセルは断末魔をあげる盗賊に目を向ける事なく先頭の馬車に向かって走る。



先頭の馬車の周辺では盾を構える警備兵3人と御者1名に対して8名の盗賊が対峙していたが、そもそも、この盗賊は弱かった。


いや、賊の頭領は元傭兵をやっていただけあって多少は剣の腕が立つ男ではあったが、集めた奴らは元農民のコソ泥など職にあぶれた連中ばかり。

そんなまともに剣も扱えない連中が15名揃ってもまともに戦えるわけもない。


すでに盗賊の死体が2体近くに転がっている。


威勢だけは良く、お互いの剣の届かない間合いで長物を振り回す盗賊の1人の背後に、後からやってきたアクセルが回り込む。


その足音で気づいたのだろう。その盗賊はアクセルの方に振り向くが、剣を振りまわしていたため反応が遅れた。

アクセルはそのままの勢いで一気に近づくと相手の右側から一気に切り付ける。


賊は持っている剣で防ごうとしたがすでに遅い。

アクセルの剣は相手の左腕を飛ばし、さらに腹にかけて切り裂いた。


賊の体。特に腹から大量の血飛沫が上がる。


「うごご・・・」

声にもならない声をたてて倒れる賊。


一瞬で仲間がやられたのを、凝視する盗賊達。新手の登場に動揺が走る。



「オメエら!慌てるんじゃない! 俺が相手になってやる!」

一瞬で弱腰になった盗賊達を威武するかのように声を荒げる大柄盗賊が前に出てきた。

この盗賊の頭領だろう。ここでアクセルを切れれば5分5分に持っていけるかもしれない。


「お前ら。手えだすなよ。」

そういうとアクセルと対峙し、上段に構えてにじり寄る頭領。


対して剣先を相手の顔の前に出して間合いを図るアクセル。


一手目はアクセルからであった。一歩大きく踏み込むと剣を差し込むように突く。


それに対して大柄な盗賊は、軽く後ろに下がり突きをギリギリ躱すと上段に構えた剣を振り下ろすが、アクセルは差し伸ばした剣をすぐに引き、賊の剣を往なし踏み出した一歩分後ろに下がる。


少し間合いを取ってお互い一呼吸する。

「なかなかやるじゃねえか。飼い犬。」

「・・・・・・・」

アクセルは挑発にはのらない。


「っち。犬っころ吠えてなんぼだろうが・・。」


2手目もアクセルはからであった。剣を相手の首の辺りに突き出しながら先ほどのように一歩踏み込む。

頭領は今度は下がらず、チャンスとばかりにその剣先を横にかわしつつ切り込むが、アクセルの踏み込みはフェイントだった。


頭領が振り下ろした剣は空を切る。


それで勝負は決まった。

頭領の両の腕が剣を握った状態で血を滴らせて地面に落ちる。


アクセルは突きと見せかけすぐに下がり、素早く振り上げた剣で相手の腕を切ったのだ。一瞬の出来事であった。


「やべー!!」「頭領がやられた!」「逃げろ!!!」


その結果を見た盗賊達は一斉に踵を返し逃げ始め、残った警備兵はそれを見て一気に賊の討伐に動く。


「こいつは領主のところに連れて行く、止血してやれ」

アクセルは頭領らしき賊を指して護衛に命令を下した。





盗賊側死者8、重症者1

商会側被害、軽症1(御者/商人見習)

アルフレッド商会の完勝だった。



**********


※※※※※ ここまで読んでいただいてありがとうございます。 ※※※※※


初の戦闘シーンなのに文才がなくてしょぼい戦闘になってしまいました・・。

更新ペースを下げてでも随時直していきたいとは思っていますが、いかんせん才能がないのでうまくいくかどうか。


何卒ご容赦いただければと存じます。

是非とも読み続けていただければ幸いです。

作者

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