第17話 剣の訓練2

あれからアルフレッドさんにお願いして、夕食後に文字の読みについて基本講習を何回か受けている。そうしないとせっかく借りた読み書きの指導本が無駄になるからね。


こちらの文字はアルファベットような表音文字に近く、全て合わせても33文字の大・小文字しかないので発音と文字のルールが判ればある程度本が読めるようになる。


アルフレッドさんの講習は効果覿面で、文字がわかると指導書を読むのがとても楽しくなった。おかげで早朝は剣の訓練、日中は読み書きの練習と充実した生活を送ることが出来ている。


そうそう、読み書きは時々ビアンカがやってきて一緒に勉強している。

一緒に勉強するのは楽しいのだが、ビアンカは飽きっぽくて飽きたら遊べだの、外に連れていけだの少しわがままを言って、結局パパの所に戻っていく。

まあそれが可愛く思えてきているんだけどね。


毎朝の剣の訓練は順調だ。

最初は腕がだるくて仕方がなかったが、徐々に慣れてくると心地よい疲労感になる。

徐々に振り下ろす回数も増えてくると、今度は別の型も間に挟むようになった。


ある程度の型を覚えることが出来れば、木剣を使った訓練をしてくれるらしい。


木剣を使った訓練は危ないので、胴と腕、頭には防具を購入しておくように言われたので、革の鎧と肘当ての表面に鉄の板が縫い付けられたグローブ、そして同じく鉄の板が縫い付けられた革のヘルメットを商会から購入した。


これらを身につけても木の剣で撃ち合えば骨折はよくある事だそうだ。

アクセルはかなりビビらせるのがうまいらしい。


しかし、防具を装備すると傭兵や冒険者になった気分でテンションが上がるよね。

冒険者ギルドに登録して冒険者になろうかな??

いや、僕には魔法学園が待っているのだよ。そもそも冒険者ギルドなんてこの街にはないようだし。。


雪が深く積もるとランニングは出来なくなるが素振りは問題なく出来る。


春になり雪が溶け出すころになり、木剣での打ち合いの練習もしてもらえるようになった。

アクセルさんは力加減が上手く、キツい一撃が入る事はまずない。

力いっぱい打ち込まれれば、骨折だらけで包帯に包まれたマミーみたいになってしまうだろう。

上手い指導者に出会えてよかった。


基本的には剣を前に構え、間合いを計って踏み込んで打ち込む。

しかし踏み込んだ時点でアクセルさんに読まれてしまい、全く歯が立たない。

なので、試行錯誤するが、そうすると型が崩れて悪い体制になりやられる。

剣ってほんと奥深い。


アクセルさん曰く、「まだまだ基礎練習がたらんな」との事なので、もっぱら剣を振り込みを続けている。


そうそう。アクセルさんと木の剣による練習を始めてから、ちょくちょくビアンカがこっちにも顔を出すようになった。


アクセルさんが「体がブレているぞ!」というと「ブレブレだぞ!カイト!」と言う声が飛んでくる。


「負けた数だけ強くなる!負けた時の状況を記憶しろ。」とか「あの状況の時に次はどう動くべきかを考えておけ」とアクセルさんが言うとビアンカは…


「負けた数だけ負けたんだぞ!」とか

「よわっちぃ理由を考えろ〜!!」とか容赦ない事を仰る。


「相手が踏み込んだ瞬間の相手の形を覚えろ!」とか

「どう対応するかを瞬時に判断できるかが勝敗を決する!」とアクセルさんが言うと・・


「相手が・・形をおぼえろ!」とか

「判断できるから?勝敗は決した!」

などなど、よくわからなくなっているようだ。


色々仲の良い愛人関係を堪能させてもらったよ。


僕も愛人欲しい。



**********



バーン村と比べると積雪は大した事がないとはいえ、少し積雪するだけでも馬車は能力が半減してしまうので本格的な商いは雪解けを待たなければならない。


春になってその路上の雪が溶け、出発の時がやってきた。


商会の敷地には4台の荷馬車が用意された。3台の荷馬車に次々と商品が積み込まれていく。

最後の1台は僕たちがが乗るので半分も埋まってはいない。


出発の準備を眺めていると、アルフレッドさんが現れる。


「旅の準備は万端ですね。なかなか立派ですよ」


僕の革の鎧と腰に下げた剣を舐めるように見て笑顔を見せた。


「貸していただいお金が役に立ちました。アクセルさんに色々教えていただきましたし」


「剣の腕は上達しましたか?」

「剣はまだまだです。農村では剣を振る機会もなかったのでこれから挽回しないと」


「アクセルからずいぶん形になってきたと聞いてますよ」

「そのアクセルさんにはひと太刀も当てる事が出来ませんけどね」


「はははっ。 アクセルは凄腕の護衛ですのでね。そう簡単には行かないですよ」


「なんだ。俺に当てようってか?100年はやいぞ」

「100年はやいぞー」

アクセルとビアンカがリュックを背負ってやってきた。


「ビアンカちゃんも行かれるんですか?」

「ああ、ちょっと長旅になるみたいだからな。そばに置いてないと心配だろ」

「ビアンカも行く!1人なんていやだもん」


「今回は特別に許可しました。その分護衛の仕事を頑張ってくださいね」

「わかった。もちろんその分は働くさ」


アクセルの後ろから護衛と思われる6名の男女が姿を見せる。


「お前ら頑張れよ」

「はい!!」「りょうかい!」「らじゃ!」


それぞれ返事に違いはあるが、どうやらアクセルはこの護衛達を指揮するらしい。


「いつも雇っている傭兵だよ」


「みんなカイトよりも強いんだよー。カイトはもっと強くなれ」

ビアンカが僕に檄をいれてくる。


「そうだね。頑張るよ。はははっ」


「さあ、みんな乗り込んで。出発するぞ!」



**********

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