第2話 東雲




 じいちゃんのかぼちゃの煮つけが死神親子の戦う栄養源となる。

 来年も俺の家のかぼちゃを守りに来てくれるだろう死神親子の為に、俺はじいちゃんの指南を受けて、じいちゃんのかぼちゃの煮つけを習得しようと考えた。

 が。

 じいちゃんから及第点をもらう事ができないまま、ハロウィン当日を迎えたわけで。

 ただ、かぼちゃのどら焼きは及第点をもらったので、せっせと作り、去年は食べさせる事ができなかった死神の娘さんに満足するまで食べてもらおうと考えていた。


 やっぱりねー。

 命がけで俺の家のかぼちゃの味を守ってくれるわけだからねー。

 うん。

 何かお返しと言うか、お礼を渡したい。




 事務所兼じいちゃんの自室にて。

 去年と違い、かぼちゃの保管室ではなく、この部屋に直接やって来た死神の娘さんは、去年とまったく同じ格好で、やはり尊大な態度だった。


「何だ?かぼちゃの煮つけは習得できなかったのか、くそがき」

「はいはい。習得できませんでした。申し訳ありません。ただ、かぼちゃのどら焼きは習得できたので、どうぞ、存分にお食べ下さい」


 娘さんを見て、次に親父さんを見ようとした俺は首を傾げた。

 うん。あれ?


「親父さんは今年は来ないのか?」

「ああ。鍛錬しすぎて腰を痛めてしまってな。療養中だ」

「へえ。親父さんにもかぼちゃのどら焼きを食べてほしかったんだけど。持って帰る事ってできんの?」

「おまえが親父様にどうしても食べてもらいたいと想いを込めていたら、持って帰れない事はない。まあ、持って帰れなかった時は、おまえがそこまで親父様に食べてもらいたいと思っていなかった、という事だな」

「あ。じゃあ、持って帰ってもらえるわ。よかったよかった。はい。娘さん。食べて。食べて」

「………ふん。流石は祖父と孫、か。おまえも年嵩の男と同じような目で見るな」

「わくわくした目って事か」

「その目に値する味かどうか」


 娘さんはソファに座って、手を合わせて、机の上に置かれたかぼちゃのどら焼きを取って、いただきますと言った。

 どうぞ。

 向かい側のソファに座った俺は、わくわくした目のまま娘さんを見た。











(2023.10.11)



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