続・ろうろう珈琲

藤泉都理

第1話 新橋






『ハロウィンに先祖の霊と共に地上に来る悪霊の存在は知っているな。悪霊は人間だけに悪さを働くのではない。作物にも同様に悪さを働くのだ。それゆえ、私たちは作物を、おまえの家のかぼちゃの味を抜き取って無機質な味にしてしまう悪霊から守る為に毎年毎年毎年、来てやっているのだ。感謝しろよ。くそがき』






 一年前の十月三十一日。

 ハロウィン当日。


 俺は初めて、死神の親子に出会った。

 黒の死神装束を身に着け、糸目でどう見てもかつらでしょとツッコみたいくらいのかぼちゃ色のアフロを頭に装着していたその親子は、俺のじいちゃんのかぼちゃの煮つけを栄養源にして、農家である俺の家のかぼちゃの味を吸い取る吸血鬼からかぼちゃを守ってくれていたらしく、この年もまた見事守ってくれたのだが。

 死神親子が力を合わせて追い払ってくれた悪霊である吸血鬼に、俺はどうしてもじいちゃんのかぼちゃの煮つけを食べてほしいと思ってしまった。




 そして今年の十月三十一日。

 ハロウィン当日。


 俺は今。

 せっせとかぼちゃのどら焼きを作っていた。











(2023.10.10)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る