クラスの地味な女の子を助けたらお隣さんでした。

ふかひれ

第一話  軽トラ

「危ない!」


 その声とともに、

 ブゥウウウ!!!

 けたたましい音を立て、スピードを上げている軽トラックが突っ込んでくる。


 バンッ――


 鈍い音ともに俺は後方に吹き飛ばされる。


 あ、あぁ……これは…さ、流石に…ま…ず……ぃ


 遠のく意識の中、俺は死を悟る。



 ◯



太陽たいよう!おはよう!」

「おぉ、絢斗あやとおはよう」


 登校して一息付いている、俺に親友の絢斗が話しかけてくる。


「もう、二年になってから1ヶ月か。太陽、もうみんなの名前は覚えたか?」

「あぁ、もちろん。友達も増えたぞ!」


 俺は小中学校で、人の名前と顔を覚えることがとても苦手だった。今では、それも克服してかなり覚えられるようになった。

 前は、名前が覚えられないせいで、友達も少なかった。

 それを、小学生時代からの付き合いである、絢斗は知っている。


「それは、良かった!」


 絢斗は、安心したように言う。


「お前、高校入ってから変わったよな。」

「そう?」

「あぁ、人と関わろうと頑張ってた。中学のときは全然だったのに。」

「まぁ……今まで通りだったら、ダメだな思ったから、かな。」


 高校に入る時に、絶対変わろうと決意した。中学の時は、絢斗たちに心配かけてたからな。


「それは、良かった!最近は、学校も楽しそうで何よりだ!」

「心配かけて悪かったな。」

「おう!」

「ちょっとは、否定しろよ……」

「ハハハ!悪りぃ悪りぃ」


 絢斗は、本当に嬉しそうな顔をしてくれる。


 本当に心配、かけてたんだな……


 絢斗と話していると、「おっはよ!」とボブ茶髪の元気溌剌な女の子、日和ひよりが後ろから顔をのぞかせてきた。


「なんの、話してたの?」

「太陽が変わった話。」

「ほんとに、変わったよね!!明るくなった!」


 日和からも、変わったと言われるぐらいに変われたようだ。


「前は、あたしらとしか話せてなかったのに最近は友達増えて〜話す機会なくなって、なんだか寂しいなぁ……なんて!」


 日和が茶目っ気たっぷりのセリフを俺に言う。


「そうか?結構、話してるだろ。」

「いや、結構減ってるぞ。」


 俺の言葉に絢斗が返してくる。


 まぁ、中学の時とかは幼馴染で親友の絢斗と日和としか話してなかったし遊んでなかったか……

 前も別に友達を作れなかったわけでもないんだけど、他の人に興味がなかっただけというか……決して俺がコミュ障だったわk……


 ――キーンコーンカンーコーン 


 俺が脳内で猛烈な言い訳をしていると、朝礼のチャイムがなった。


「そろそろ戻ろ。」

「あたしも〜」


 そう言って、絢斗と日和は自分の席に戻っていく。


 アイツらに心配かけないように頑張らないとな……


 なんとなく席に戻る絢斗のことを、目で追っていると一人で本を読む女子が目に入った。長髪の茶髪でメガネをかけた静かな女の子。


 あの人は……確か…霧島きりしまさん?だったよな。いつも静かに本を読んでいるよなぁ……て、てか、姿勢良ッ!!う、羨ましい……


 霧島さんを見ていると、先生が教室に入ってきた。


「ホームルームを始めるぞ〜」



 ◯



 ――キーンコーンカーンコーン


「おわったぁ〜!」


 一日の終了のチャイムがなり終わると絢斗が俺の席に来る。


「太陽、今日部活は?」

「オッフ〜!絢斗は?」

「俺も〜!!一緒に帰ろうぜ!」

「おう!」


 俺は弓道部、絢斗はバスケ部に入っている。


「日和も誘うか?」

「あー、日和は今日もあるって言ってた。」

「そうなのか?華道部は熱心だなぁ。」

「なぁ〜」


 日和は、あんな感じでいかにもスポーツしてます!って感じだけど華道部だからな……


 実際、日和は運動神経もいいから華道部に入るって言ったときは非常に驚いた。今は華道部を全力で楽しんでいる。なんでも、楽しめるところは日和の良いところだ。


「まぁ、それじゃ帰るか!」

「そうだな。」


 絢斗と一緒に教室から出て、階段を下っているときにあることを思い出した。


「そういえば、今日隣のクラスのやつから日和の連絡先聞かれた。」

「またかぁ……で?教えたの?」

「いや、いつも通り宗教勧誘のおばちゃんの連絡先あげた。」

「それは、おばちゃんに迷惑だろ。」

「いや、なんか教徒が増えたって喜んでた。」

「そ、そうか……」


 日和は才色兼備、八方美人で大変よくモテる。連絡先を聞かれるなんてしょっちゅうだ。


「まぁ、自分から聞きに行くようなやつにしか日和と話す権利はない!」

「そうだな……」


 俺たちから、日和の連絡先は渡さない。これは俺と絢斗で決めたことだ。


「絢斗も、モテてんだろ。」

「お前もだろ?」

「俺は…そんなにだよ。」


 ――ヒラ…


 そんな話をしながら靴箱を開けると、紙が出てきた。


「なんだ?それ」


 絢斗が聞いてくる。


「えぇっと?何々?好きです。付き合ってください 一年一組 奥野 亜希子あきこ

「「………」」

「ほら見ろ。」


 絢斗がこれみよがしに言ってくる。


 漫画かよ、タイミング良すぎるだろ。


「でも、これどうやって返事すれば良いんだ?わざわざ呼び出してフルのもあれだしなぁ」

「ふるんだ。」

「まぁ、ね。話したこともないし……あ、連絡先書いてる。」


 手紙をよく見てみると、連絡先が書かれていた。


 後で、連絡するか……


 連絡先を確認し紙をポケットに突っ込む。


「お前、ほんとに誰とも付き合わないよな。なんで?」

「好きじゃないから…?」


 歩き始めながら、絢斗が聞いてくる。


「ふ~ん。そうか。」

「興味なさそうだな、お前が聞いて来たのに」

「そんなことねぇ〜よ」


 そのまま、喋りながら歩き交差点についた。

 周りを見ていると、人混みの中に霧島さんを見つけた。


 霧島さんって家こっちなのかn……


 視界の端に少し前の方からスピードを上げ交差点に突っ込んで来る軽トラが写った。


 あ、あれ止まる気ないぞ!交差点にはたくさんの人がいる。このままだと……危ない!


「あぶない!!避けて!!」


 そう考えているときに、隣から大きな声が発しられた。絢斗が交差点の中にいる人に呼びかけた。その声に、気付きみんなが軽トラトから逃げる。


 こ、これで大丈夫か…


 安心しかけたとき、さっきまで目で追っていた女の子が動いていないことに気付く。


「危ない!!」


 そう、張り上げた声とともに足を踏み出し霧島さんを抱き庇う。

 ブゥウウウウウ―― けたたましいクラクションがなった後、


 バンッ――


 という音が響く。その鈍い音ともに俺は後方へとふっとばされる。


 あ、あぁ……これは…さ、流石に…ま…ず……ぃ


 遠のく意識の中俺は死を悟る……


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