愚かな傀儡

塔架 絵富

プロローグ

 僕は真実を知ってしまった。


 思いがけないことに身を震わせ、うつむいていた。目の前に突き出された真実に僕は苦しめられた。そんな僕を見て、笑い続けるやつを見ると、なんて愚かなんだろうと思う。でもそれは僕の視点の話だ。向こうから見ればこっちが愚かなんだろう。

 どっちの視点で見るかで何もかも全部変わってしまう。

 もう、疲れたんだ。

 僕はどれだけ心を殺した? ストレス発散できずに我慢し続け、限界に達したら限界のラインを無理やり上げて耐えてきた。いつになっても苦しいままで変わらないのに、来るはずもない希望を求めて生きてきた。絶望しか見えないとしても、裏側に希望はあると信じてきた。

 自分は誰かの傀儡くぐつなのだろうか。もしくは自分は誰かを傀儡にしているのがろうか。どちらにしろ、僕たち全員愚かなのだ。


 この世界で生きるうえでおろかではない人はいない。この世界で生きるうえで傀儡ではない人はいない。この世界の人は全員――愚かな傀儡なのだ。

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