第6話 前世の奴らが追いかけてくる
旧知の仲である……いやそうでもないな、昔、仕事を押し付けていた部下との懐かしい邂逅は、今生では何かと一緒にいる幼馴染の元勇者とのメンチの斬り合いで幕を閉じ……なかった。
その前に我を溺愛する父がギルドの二階から飛び降りて、ダンダリオンとの間に入り、凶悪な顔で圧をかけていた。
ダンダリオンは元勇者と我の父の顔を楽し気に見比べ、胡散臭い笑顔と人当たりのいい言葉で煙に巻き、華麗に退場して行った。
昔馴染みと父のどつき合いが見れなかったのは残念だが、今生では魔王でもなく魔族でもなく、ひ弱な人族なので大人しく家に帰ろうと思う。
……ま、前々々世の大賢者時代の知識と魔法、前々世の孤児時代の雑草根性と前世の魔法の能力、全てを受け継いではいるけれども。
翌日。
まだどこか不貞腐れているような元勇者と共に冒険者ギルドに来て、適当にランクに合った依頼を受け出発。
いつもより口数の少ない元勇者、アーサーと乗合馬車に揺られ着いた森で、依頼にあった魔物をサクッと討伐。
時間が余ったので薬草採取に精を出し、お昼をやや過ぎた頃に冒険者ギルドへと戻ってきた。
そして、ややコミュ障である我を壁に立たせ、アーサーは窓口に依頼達成の報告へと行った。
いつもどおりの流れである。
……いつもどおりの……いつもどおりの平穏な、平凡な、日常なんだけどなぁぁぁぁぁっ。
チラリと横目で見ると、我の横には満面の笑みを浮かべたデカイ男が立っていた。
今も我の瞳に映ったことに狂喜乱舞して、赤毛の尻尾がブンブンとうるさいぐらいに振られる。
「……お前もか」
「はいっ。マイ・ロード」
勘弁してくれ。
今度は、魔王時代の魔王国騎士団長を担っていた赤毛のバカ……じゃなかった人狼族のバルバロッサ。
何しに来たんだ、お前っ!
「だって、昨日ダンダリオンの奴がご主人様に会えたって自慢してきたから」
ぶうっと可愛く口を尖らせているつもりか? 人狼のお前の口が尖ったところでかわいくないわ。
「……ダンダリオンにも言ったが、今は新しい魔王が孵っているだろう。そっちに忠誠を尽くせ」
「ええーっ」
不満気な声を上げたかと思えば、プイッと顔を横に向けて「いや」と子供のように駄々をこねる。
「あぁ?」
イラついたので目をギラリと細めて睨んでしまった。
「キャン」
ブルブルと震えて尻尾を股に挟むなっ。
お前、魔王国の騎士団長にまで昇り詰めた魔族だろうが? そんなに弱くてどうする?
「クロエ? 今度は誰?」
しまった、窓口の受付がスムーズだったのか、いつもより早くアーサーが戻ってきてしまった。
別に言い訳など必要ないかもしれないが、昔馴染みのせいで面倒ごとが起きるのは避けたい。
「ああ、こいつは……。アーサーこそ、そいつら誰だ?」
いつも女という女を無意識に侍らせている元勇者だが、今日その背中にへばり付いているのは見覚えがすっごくあるんだが……。
まず右側にいる白い上品なワンピースを着た金髪なたおやかな女は……元聖女じゃないかっ!
そ、そして左側に陣取る男は……金属鎧を着た騎士風の男は、前世でお前の友であり腹心であった唯一無二の男、ランスロット……。
お前を裏切り、聖女と繋がり、国を簒奪してお前を殺した男、ランスロットじゃないかっ!
こ、今生もこいつらと関わらないといけないのか?
「うっ……」
クラッと目の前が真っ暗になった。
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今回、こちらの短編を長編に手直ししようと考えております。
その場合は、長編として改めて来年の1月か2月に新作としてUPする予定です。
こちらの短編はしばらく長編と重複して置いておきますが、頃合いを見て下げることになります。
書きたい箇所だけ、とりあえずで書き進めましたので、現在登場しているキャラクターの登場は長編ではバラつきます。すみません。
まだ予定ですが、長編として更新されましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
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望まぬ転生、お断り! 沢野 りお @rio_sawano
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