天国へ行く僕と幸せになった妹

ぴっさま

吉井浩人

第1話 僕の日常

僕の名前は吉井浩人よしいひろと

隠れんぼぐらいしか取り柄が無い小学三年生だ。


僕の一日は早起きから始まる。

最初は目覚ましを仕掛けて無理やり目を覚ましていたけど、ここ数ヶ月の習慣から目覚ましが無くても早く起きられるようになったんだ。


今は朝の三時半時だけど、待たせる訳には行かないから四時までには着かないと。

僕は一緒に寝ている妹の真由子まゆこを起さないように、そっと寝床を出る。


そして物置小屋の扉を開けて外に出た。

まだ辺りは真っ暗だ。


もうそろそろ冬だから、半袖半ズボンだと結構寒い。

僕は何回か屈伸運動をして体を暖めると目的地に向けて駆け出す。


たぶん20分ぐらいで着くと思う。



ーーーーー



いつもの様に目的地の五階建ての集合住宅の前に着いた。

少し待つと目的の人がバイクで現れる。


「おはようございます!」

「おう、おはようさん! おい、また少し痩せたんじゃないか?」


「いえ、大丈夫です!」

「そうか。早速だけどこれ、昨日と同じだから」


「はい。ありがとうございます!」


僕はオジサンから新聞を10部もらい、それを脇に抱えて階段を駆け上がる。


この集合住宅は五階まであるけどエレベーターが無い。

僕は、少し腰が悪いと言う新聞配達のオジサンの代わりに3階以上の階の配達をして、お駄賃として一部につき5円を貰う約束になっているんだ。


僕はまだ小学生だから仕事をしてお金を稼ぐ事が出来ない。

これは僕が友だちと思い付いた少しでもお金を稼げる手段だった。

そしてこの話に乗ってくれたオジサンにはとても感謝してるんだ。

いつの日にか恩返しが出来ればと思う。


(はあ! はあ! はあ!)


息が苦しいけど、配達の為にダッシュで階段を昇り降りする。

集合住宅の入口は何か所かあるので、それを繰り返して配達が終わる。


「お、終わりました!」


「お疲れさん。はい50円ね」

「ありがとうございます! またよろしくお願いします」


僕はオジサンからお金を貰い、お礼を言って頭を下げる。


「いいって。またな! ちゃんと飯食えよ!」


オジサンはバイクで去って行った。

僕は稼いだ50円玉を撫でると、大切にポケットに入れて帰り道を急いだ。



ーーーーー



およそ五時頃に家に着き、伯父さんが開いている中華店の店の前を30分ぐらいかけて丁寧に掃き掃除する。

毎朝、店の前を綺麗にしろとお世話になっている伯父さんに言われているからだ。


それから少しだけ勉強してゆっくりした後、小学一年生の妹の真由子まゆこを起こして着替えさせ、七時前には伯父さんの家の勝手口で開けてもらうのを待つ。


僕たちがなぜ伯父さん達にお世話になっているかと言うと、僕達のお父さんとお母さんが去年交通事故に遭って亡くなってしまったから。

お父さんの親戚は一切不明なので、僕たちは同じ町内で店を開いている亡くなったお母さんの兄に引き取られたんだ。

交通事故といっても相手は逃げてしまってわからないらしく、お金が貰えないと伯父さんは少し悔しがっていたみたい。


引き取られたと言っても渋々といった感じで伯父さんたちには煙たがられている。

その証拠に僕たち兄妹に割り当てられているのは庭にある物置小屋だ。

物置小屋自体は結構新しいみたいだけど、狭くて明かりも無くて簡素な布団が一組しかないんだ。


10分ほど勝手口の前で待つと、現れた伯父さんが家に入れてくれたので朝ごはんをもらいに行った。

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