春風のイタズラ―13
しかしなんやかんや言いながらも、優しいヒデはスマホを手に取った。
ホンマええやっちゃ。これでまだチェリーボゥイやなんてなぁ……藝大7不思議の中に入るんちゃう?あ、ちなみにおれはチェリーちゃうで!恋多き男やからな!
「……やっぱり出ないや」
しばらくしてヒデが苦笑する。そらそうやろな。休み時間に、わざわざ出るわけないな。
「あはは!いいよいいよ、ありがとう!同じ学校にいるんだから、いつかどっかで会えるでしょ」
なんや、リンはサッパリしたヤツやな。まだ男神ショックから完全に立ち直ったわけやないが、ある意味でおれは見る目があったのかもしれん……たぶん。
「ていうかさ!一佐だっけ?昨日、上野公園で朝飯食ってたよね!?」
突然、リンの大きな瞳を向けられる。あかん、キュンとしてしまうッ!やっぱり可愛いッ!
「せ、せやな。おれのハンカティーフを拾ってくれたな」
「ハンカティーフって!ウケるー!」
腹を抱えてゲラゲラ笑うリン。うむ、まごうことなき男子である。一気にキュンが冷めたわ。
どうやらあの時、リンは教授のところへ行くために急いどったらしい。せやから学校まで猛ダッシュやった、と。
なんにしても、おれの恋は見事に散っていったわけや。たった2日で。儚いもんやで。
リン達は飯を食い終わると、3限目の授業へ行くため学食を後にした。ちなみにおれらは全員、次は空きコマ。偶然やけどな。
「なぁんか大人しかったねぇ一佐くん」
ヨネはスマートに3人と連絡先を交換しとった。さすがのコミュ力やん。
「いっつもはお喋りマシンガンなのにぃー」
「女神が男神やったさかい、そらショックを受けるやん。おれはナイーブなんやで?」
「ナイーブ……なんだ……」
なんやヒデ、その顔は。失礼やな。一佐と書いてナイーブと読むのを知らんのか?
しかし失恋とは、男の魅力をグンとアップさせるエッセンスや。苦い経験を経て深みが出るねん。ふっ……またモテてしまうな。
「そやけど……なんやおれらの藝大ライフは、浅尾っちを中心に回っとるなぁ」
まさかリンと浅尾っちに繋がりがあるなんてな。
いや待てよ。むしろ、おれと浅尾っちが運命の相手なんちゃう!?キャーッ!
「んふふぅー浅尾きゅんってーなぁんか不思議な魅力あるもんねぇー」
「そやねん!気ぃついたら浅尾っちのこと考えてしまうねん!」
「それこそ恋じゃないのぉー?」
「えっ…………トゥンク…………ってなるかいッ!おれは可愛い女の子が好きやっちゅーねんッ!浅尾っちに対する気持ちは尊敬と興味や!」
おれの恋愛対象は異性やからな!残念ながら、読者のみなさんが期待するようなBL展開はないねん。美男子同士の恋愛が好きな諸君、すまんな。
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