PASSION and LOVE大作戦―4

「誕生日パーティって……でも彼女いるなら当日は難しいかもよ?」

「せやから学校でするんや!」

「え、学校で?」

「あんま仰々しくパーリーしても、浅尾っちは絶対ノリ悪いやろ?ほなら、ほんのちびっと“特別な日”を演出したろ思てな。ヒデも協力してや!」

「い、いいけど……」

「よっしゃ!燃えてきたでー!」


 そうと決まれば、善は急げや。おれは早速、家に帰ってから浅尾っち誕生日パーリーのプランを練った。

 誕生日を祝うんは“生まれてくれてありがとう、出会ってくれてありがとう”っちゅーのを伝えるためや。つまりPASSION and LOVEをGIVE and TAKEする儀式!それが!誕生日パーリーやねんッ!

 今は地球の裏側におるような距離感やけど、これで絶対に距離が縮まるはずや。おれはやっぱり、浅尾っちと仲良うなりたい。おれのシックスセンスが言うてんねん。浅尾っちはおれの人生において、めちゃくちゃ重要なキーパーソンやって。

 もちろんヒデもそうや。なんちゅーか、かけがえのない存在になる予感がバチバチしとる。理屈やのうて野生の勘や!

 この誕生日パーリーを通じてヒデと浅尾っちとの絆が深まり、切磋琢磨しながら己を磨いていく……これぞおれが求める青春ッ!


「……ちゅーわけでな、ヒデは浅尾っちをここへ連れてきてほしいんや」


 翌日の昼休み。おれとヒデは学食で昼飯を食いながら作戦会議を開いた。

 藝大の学食“藝大食楽部くらぶ”は、アレルギーや宗教上の問題に考慮したメニューも置いとる親切なところや。そして安い。日替わり定食は税込600円、ご飯大盛りはプラス30円。ボリュームもあるし、ほんま学生の味方やで。

 今日の日替わりメニューは四万十鷄の唐揚げやった。おれとヒデは迷わず日替わり定食の食券を買うたよな。


「浅尾を連れてくるって……どうやって?」

「それはヒデが考えることやで。おれより浅尾っちと仲ええやん」


 学食は外のテラスにもテーブル席が設けてある。そこでささやかな誕生日パーリーを開催する作戦やねん。


「うーん……浅尾って学食で食べないと思うんだよね……ていうか昼ご飯自体、食べてない気がするし」

「なんやて?不健康やな」

「野菜ジュースばっかり飲んでるんだよ。固形物食べると吐いちゃうとかで」


 確かに、浅尾っちはいつも青白い顔しとる。しかし固形物食うと吐くて……やばいんちゃう?なんかの病気か?


「それやったらケーキは食われへんかな……」

「浅尾は甘いものそんなに好きじゃないよ。バレンタインで女子からチョコ貰った時に言ってた」

「バレンタインでチョコを貰ったやと!?うらやまけしからんッ!……いやそれは置いといて、ほなら浅尾っちは何が好きなんや?」

「そこまでは知らないけど……」

「あーヒデちゃんと一佐くんだぁー」


 のぉーんびりした声が割り込んできた。振り返ると、タコライスを持ったヨネがいつものニコニコ顔で立っとる。タコライスも美味そうやな。

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