PASSION and LOVE大作戦―3

「え、浅尾の彼女?」

「あんだけかっこよけりゃ、おるよなぁ?」


 ヒデが眉根を寄せて首を傾げた。


「うーん、いるらしいって噂はずっとあったけど……本人からは何も聞いたことないから」

「え、恋バナせぇへんのか?青春の会話やん!?」

「言ったじゃん、浅尾は自分のこと喋らないんだよ。俺が彼女いないって話をしても、ふーんって言われるだけで終わるから。それ以上、会話が発展しなくてさ」

 

 高校生の会話ゆーたら、9割9分8厘が恋バナやろ。まさか恋愛に興味ないんか?いやいや、そんなわけないよなぁ。浅尾っちは秘密主義なんか?うーん、ほんまミステリアスなお人やわ。


「ていうか、一佐はやたらと浅尾のこと気にかけるね」

「なんや知らんけど、めっちゃ気になんねん。初めて会うたタイプっちゅーか、妙に不思議な魅力があんねんなぁ」

「まぁ、独特な雰囲気はあるしね。でも基本的に単独行動だし、自分から話しかけることってほとんどないんだよね」


 どうやら、無口で目つきが悪い浅尾っちは高校の時から周りの連中に怖がられとったらしい。

 せやけど描く絵のレベルは群を抜いとるさかい、畏敬の念っちゅー感じやったとか。孤高のカリスマってやつやん?めっちゃかっこええやん?


「こりゃ絶対彼女おるで!孤高のカリスマの理解者が!そっと見守る健気な彼女が!」

「まぁ、いそうな感じはするけどね。女性と歩いているのを見たっていう人もいたし」

「ほうほう!それはどんな女性や!?」

「あ、あくまでも聞いた話だよ?黒髪ロングのクール美女……だって」


 ほらなー!絶対浅尾っちの彼女は美女やと思たわ!孤高のカリスマに寄り添う黒髪美女……いやッ!絵面よすぎッ!バーで語り合ってそうやん?バーボンとか飲んでそうやん?あちらのお客様からです……ってやつやん?


「いや未成年やっちゅーねんッ!」

「な、なに?」


 おっと。心の声が漏れとったわ。ヒデを驚かせてしもたな。

 

「いやいや、浅尾っちは大人っぽいなぁと思っただけや。ほんまに18歳なんやろか?あれは30代くらいの色気やで。知らんけど」

「数日後には19歳だよ」


 ヒデは結構ツッコミが細かい。別にええがなってことを、きちんと正しく訂正してくる。

 せやけどそれは人の間違いを正したいからやない。ただ几帳面な性格っちゅーだけや。頭ボサボサで野暮ったいくせにな。

 ……ん?ちょっと待てや。数日後やて?19歳やて?


「もうすぐ誕生日なんか!?浅尾っちは!」

「うん。18日だよ」

「来週やないかッ!パーリーせなあかんわ!」

「ぱ、パーリー?」

「誕生日パーリーや!」


 これや!これこれ!浅尾っちとお近づきになる方法!誕生日を祝われて嫌な気持ちになるヤツはおらんやろ!みんなで盛大に祝って絆を深めるんや!

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