つまりは類友―7

「これはぁーぬらりひょんですねぇー」


 それは、大きな頭で不気味な笑みを浮かべる老人の絵。ぬ、ぬらりひょんて……妖怪やろ?

 

「子供の頃から妖怪が大好きでぇー妖怪とお友達になることが夢でしたー」


 この絵、ほんまにこの子が描いたんか?めちゃくちゃ不穏やんけ。ほんわかした森ガールっぽい見た目やのに、こんなおどろおどろしい妖怪の絵を描くやなんて……人は見た目によらんと言うが、あまりにもって感じや。めっちゃ熱く妖怪愛を語っとるが、絵が衝撃的過ぎて頭に入ってこぉへんわ!

 ほれ、全員ポカーンとしとる。浅尾っちの表情は、まったく変わっとらんけど。いやんクールッ!


「妖怪独特の雰囲気を出すには日本画の技法がピッタリだと思うのでーこれから一生懸命、日本画について学びたいと思いまぁす」


 米田という女の自己紹介は、最後までの~んびりした口調で終わった。

 トップバッターとラストバッターの印象が、あまりにも強烈すぎるやん。ほんま、藝大はおもろいところやで。

 んで、25人全員の自己紹介が終了したところで、教授の講評タイムとなった。


「えーみなさんそれぞれに個性が出ていて、非常に有意義な自己紹介でした」

「うぅん、とぉっても楽しかったですよぉ」


 教授コンビは満足そうな表情や。そらそうやろ。稀代の天才が入学したわけやしな!

 

「えー今年の現役生は4名と聞いています。年齢も出身地も経歴もバラバラな人たちが集まったわけですね」


 んー?現役が4人やと?おれとヒデと浅尾っちと……あと1人は誰なんや?


「同じ組織に属する……つまりは類友というわけです。分かりますよね?類は友を呼ぶ、です。日本画を愛する心が、みなさんをここへ呼び寄せたんですね」


 セクシー岡田教授も、今江教授の隣でウンウンと頷いとる。

 類友か。確かに、そうかもしれへんな。つまり、おれと浅尾っちも友。いやッ!嬉し恥ずかしッ!キュンッ!


「絵はひとりで描くもの。しかし“ひとりきり”では描けません。この言葉の意味が理解できるよう、しっかり頑張ってください」


 ひとりで描くのに、ひとりきりでは描けへん……なかなか深い言葉やで。知らんけど。

 こうして、ウキウキワクワクの自己紹介が終了。それから早速、最初の制作課題についてセクシー岡田教授から説明があった。植物制作……百合と菊か。テーマ以外、特に細かい決まりはないらしい。

 ほんまは、ずっと鳥だけを描きたい。年がら年中、鳥を愛でていたいねん。

 せやけどここは学校や。自分の好きな絵だけ描けるわけやない。いろいろなモチーフを描くことで表現の幅が広がるわけやしな。よっしゃ、やったろやないか!

 みんなの作品を見てえらい刺激をもろたし、おれの心はめちゃくちゃ昂っとった!頑張るでー!

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