第24話 YABUーHEBI!?
「もんげらーよ! ももんげっけ!」
「……え? 何? 何を言っているの?」
もどかしい!「君はここにいるんだ! じっとしてるんだよ!」と言いたい! だがこれが限界だ。彼女を植え込みの裏に連れて行き、隠れているよう指示したつもりだ。彼女を抱えたままでは反撃が出来ないから、やむを得ない。
「ももんやーぎ! もるげもん!」
蛇の魔王を挑発し、剣を抜きながら相手の方へと向かう。エルに危害を与える隙を作るわけにはいかない。
「ホホホ、勇敢な事ね。お姫様を守る騎士気取りかしら!」
横薙ぎに鞭を一閃してきた。俺はとっさに身をかがめて、スライディングをしながら魔王への接近を続け、足元へ体当たりをしてやった。足先が相手に触れたと思った瞬間、魔王は瞬時に姿を消した。
「バカね。ここは私のテリトリー。自分の思うがままに行動することも出来るのよ!」
俺はスライディングを止め、起き上がり、相手の声がする方向に向き直った。時すでに遅く、鞭が振るわれた後だった。鞭は体に巻き付き、俺は絡め取られ動きの自由を奪われた。
「も、げ、がっ!?」
「少しおとなしくしてもらうわよ。……さっきから気になってはいたのだけれど、何故声を出せるのかしら? 私のかけた制約が完全に機能していないのは不可解だわ。どんなイカサマを使って破ったの?」
「もーりぇ、きゅーす!」
し、知るかよ! 俺がしゃべろうとしたら勝手に“もんげら語”に変換されるんだ。しゃべろうとしているうちに、どんどん複雑な事を言えるようになってきている気がする。もんげら語をマスターしつつある。何の役にも立たんけど。
「まあいいわ。それよりももっと苦しめたあげるわ。すぐに殺してしまっては私の気が収まらないもの。」
どういう仕組みかわからないが鞭が次第に俺の体を締め上げてくる。鞭が生きているみたいだ。加えて鞭の姿が徐々に蛇のような姿になっていく。
「シャァーッ!」
鞭の先端が蛇の頭に変化し、俺を威嚇してきた。鞭は本当に蛇に変化したようだ。流石に蛇の魔王ってだけのことはある。
「あなたは悉く私の計画を邪魔する。しかも私の企みとは知らずにあなたは偶然遮る。何もわかっていない癖に邪魔をするのが腹立たしいのよ!」
更に締め付けを強めてきた。理由はよくわからんが、俺への恨みは相当なものらしい。でも何のことかわからんから、逆恨みみたいなのはやめてほしいな。なんとかしないと本当に絞め殺されてしまう。しかも、この状態で蛇の頭に噛み付かれでもしたら、避けようがない。……いや、まてよ? 噛み付く……?
「もっと苦しめてあげるわ。締め上げるだけでは物足りないから……毒で更に苦しめてあげる!」
蛇の頭は噛み付いてきた。待っていたぞ、この瞬間を!
(ガブッ!)
「シャアアーッ!?」
俺が逆に噛み付いてやった。噛み付くときに頭部を俺の顔付近に接近させる必要がある。それを利用して噛み付く。藁にもすがる思いで考えた抵抗手段だ。
「ぐあああああっ!? お、おのれ!」
噛み付いたところで、蛇の拘束が少し緩んだ。痛がっているということは、鞭とはいえ体の一部なのかもしれない。脱出手段は……見様見真似だがあの技を試すしかない!
「ぐうううぁっ! 拘束から逃れるだと!」
一0八計が一つ、蛇身濘行! 宗家が大武会で披露した一回しか見たことはない。でも技自体、組技を無効化する事は流派内でよく知られていた。そして技の仕組みも。体の柔軟性を高めて拘束を逃れるのだ。俺のは不完全だが、緩んだ縄から逃れるようなもんだ。それぐらいならモノマネレベルでもなんとかなる。蛇への噛み付きを強めつつ、さらに緩めさせ、逃れる事に成功した。このまま一気に決める!
「もんぱ、もうもうめつまん!」
何言ってんのか伝わらねえ! 締まらねえ!俺、究極奥義繰り出してんのに! 剣を振り下ろす前に、魔王の左斜め上から強烈な閃光が打ち込まれた。危険を感じた俺は振り上げた剣をストップさせ、その場に踏みとどまった。
(ズドォォォォォン!!!!!!)
閃光が収まった後、地面は大きく抉られ、魔王の姿はいつの間にか消えていた。それはともかく、誰だ? こんな大それたことをしたのは? 閃光が放たれた方向を見ると……屋敷の屋根の上にアイツがいた! 自称婚約者ラヴァンだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます