第6話 少女が見た鱗茎


「だから、タマネギはいらないって言ってるだろ!」



 アニキ達の準備が終わるまでの間、あっしとゲイリーは宿の一階の酒場で待っているでヤンス。のんびりマターリしてたら、この大声! ビックリしたでヤンス! 朝から元気でヤンスねえ。何事ヤンスかな?



「そう言われても困るんですよ、お客さん。スープの中からわざわざ取り除くのは無理ですよ。」



 どんな奴かと思ったら、声の主は若かったでヤンス。しかも美少年でヤンス。ミャーコちゃんなら、速攻で声をかけに行きそうでヤンス。



「……チッ!」



 舌打ちしながら、パンとスープを受け取り、不機嫌そうに食べ始めたようでヤンス。それにしても、人間のクセにタマネギ嫌いなのは甘えでヤンス。ホントに最近の若いモンは……。あっしらコボルトは食べたら死ぬヤンスよ。



「ダメだよ。好き嫌いしてちゃ!」



 ミャーコちゃんがやってきたでヤンス。さっそくタマネギ嫌いの謎の美少年にアタックしてるでヤンス! 初対面で説教から入るなんて、ビギナーにはとても出来る芸当ではないヤンス!



「誰だよ、お前?」


「年上を“お前”とか言うな!」



 また、始まったでヤンス。ミャーコちゃんに“お前”呼びはNGでヤンス。イケメンでも地雷を踏むんでヤンスなあ。あっしはてっきり「ただし非モテに限る」と思ってたでヤンスのに。



「……は? 何言ってんの? 俺の方が年上だろ。」



 見た目は美少年の方が背が高いので、年上に見えるでヤンス。対してミャーコちゃんはちょっと小柄なので、2、3歳下に見られることが多いでヤンス。



「ウチは十六なんだけど?」


「……なっ!? ……チッ!」


「やっぱ年下じゃん!」



 美少年は歳を言わずに悔しそうなリアクションしただけヤンス。でも、わかりやすすぎるでヤンス。年下なの丸わかりでヤンスね。



「なんだよ、一個上なだけで偉そうにするな!」


「へー、十五なんだ。それなのにタマネギ食べれないんだ♪ カッコ悪~♪」



 ミャーコちゃんは美少年を煽り始めたヤンス。火に油を注ぐようなコトしてるでヤンスぅ。美少年もマジな顔つきになってるヤンス。これはヤバイヤンス。切れるかもしれないヤンス。



「どうせ食わず嫌いなだけだろ♪ 思い切って食ってみろ!」


「うるさい。……お前を殺す。」



 いつの間にか剣を抜いてるでヤンス! ミャーコちゃんの首に当ててるでヤンスぅ! 大ピンチ! どうにかするヤンス! でも、勝ち目なさそうヤンス! ……ハッ!? 舎弟にやらせればいいヤンス……って、寝てるヤンス! 図体デカいのに肝心な時に役にたたヤンスぅ!



「なにマジになってんの、バカじゃない?」



 強気に言ってるけど、ミャーコちゃん半泣きになってるヤンス。あっしなら多分漏らしてるヤンス。それぐらい少年がガチで恐いヤンス。



「ハハハハハッ!」



 少年は剣をしまって、離れた席に行ってしまったヤンス。ミャーコちゃんが取り残されたから、急いで近くに行くヤンス!



「……なにアイツ、マジでムカツク!」


「ミャーコちゃん!」


「……ああ、ワンちゃん。ありがと。」


「もう心臓がバクバクしたヤンス。見てるこっちがヒヤヒヤヤンス!」


「う、うん。ゴメン。」



 さすがにミャーコちゃんもショックだったみたいヤンス。さすがにあんな若い少年が怖いことするとは誰も思わヤンス!



「おまたせ! ちょっと遅くなっちまった!」


「ゴメンね、みんな。私が手間取ってたから、遅くなっちゃったの。」



 アニキとエルしゃんがやっと来たヤンス。ちょっと遅すぎヤンス。なにしてたでヤンス?



「なにかあったのか?」


「……べ、別に……。」



 ミャーコちゃんはなにもなかったようにしようとしてるヤンス。あっしもそれにあわせるヤンス。まあでも少年を見たらなにか気付くかも……って、いつの間にかいないでヤンス。しかも食べ物は完食したみたいでヤンス。タマネギ以外は……。



「……!?」



 エルしゃんがタマネギの残った皿を見つめてるでヤンス。美少年の残り香でも残ってたでヤンスかね? まっさか~? あっしらコボルトじゃないんでヤンスから違うでヤンスね。気のせいでヤンしょ!

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