第22話西園寺

 教室に入る、特に何があるという訳もなく、席につく。 

 

 すると意外と早く声をかけられた。 

 

 「おい!お前六条一輝だよな?」 

 

 「ああ」 


 「ずいぶん痩せたな。前は規格外のデブだったのによ。でもよぉ、痩せてイメージ変わったからって、あのフェイク動画はやりすぎだぜ。治癒に植松虎一までぶっ飛ばすなんて、お前じゃ到底無理な話だろ?同級生の間じゃ、やっぱりガセだってすぐ話まとまったぞ」 

 

 「ふ~ん、元同級生か」 

 

 やはり元同級生から見たら、急に痩せて治癒に目覚めたなんて信じられないし、虎一をぶっ飛ばしたのも信じられないか、まぁ客になりそうにない奴ら相手に嘘だ、本当だ言ってもしかたないし、周りのお貴族様達は何故か俺が治癒を隠したがってるみたいな風潮が流れてるし、俺的にはどっちでもいいだけどなぁ。 

 

 「痩せて折角イケメンになったんだがら、前みたいにあんま変な事しなきゃいいのによ」 

 

 名前の知らない同級生に向けて、適当に相づちを打ちながら話を聞いていると、教室のドアが勢いよく開いた。 

 

 「六条一輝はいる!!」 

 

 金髪の美人だった、上級生かな? 

 

 「俺ですけど・・・・・」 

 

 俺を見て、一瞬泣きそうな顔をして吐き捨てる様に、言葉を叩きつける様にいった。 

 

 「妹を・・・・羽衣を助けて・・・・・・」 

 

 何かに追われていて、後がないそんな姿に見える彼女が絞り出すように勢いにまかせて言った一言。 

 

 「ここじゃぁあれなんで、場所変えましょうか?あー・・・・・」 

 

 「西園寺、西園寺愛よ」 

 

 なんといっていいか、しーんと静まり返った教室から、そろそろと西園寺先輩?をつれて出た。 


 自販機のある、広場にきて話を聞く。 

 

 「それで?羽衣さんはどんな症状で?」 

 

 「症状?あんなの!症状もクソもないわ!人間を団子にしたみたいに肉の球体になって、微かにわかる眼や鼻、口に食事を与えてるだけ!あれだけ可愛かった妹が、西園寺家の恥となる?醜い見た目だから?まともに呪術師にも医者にも治癒師にも見せないで!極秘にお願いした高名な教祖の聖人は言ったわ!名家や貴族にある、代々継がれる呪いの一種だって!たとえ聖堂教会の聖人や聖女でもヴァチカンの聖女でも治すのは無理だろうって!西園寺の名をかけてヴァチカンの聖女にお願いしたわ!でも日本にきてくれさえしなかった・・・・・・・」 

 

 自分の中の現実が壊れていくかの様な発狂するかのように、両手で顔を抑えて溢れ出る言葉、金さえあればなんでも叶うと思っていた現実があっさり不可能に占拠されどうしようもなくなって、パニックを起こしたかのようにヒステリックに吐き出す。 

 

 「それでどうして俺なんかに頼ろうと?生徒の間じゃフェイク動画で通ってるはずですがね、それこそ藁にもってことですか?」 

 

 「フェイク?偽物?見くびらないで!?どうやったかなんて確かにわかんないわ!でも貴方は結果を残してる!綾小路清香もニア・エルドラドも結果的に治ってる!本物かどうかなんてどうでもいい、あの子を・・・・・・あの子を助けてくれれば」 

 

 まぁまぁ合格かな?と思い、写真に目をやる。 

 

 「これは普通じゃないのは見てわかる。明らかに呪病ですなぁ、しかも病気の源の呪いが生きてるって事は、彼女は大変な激痛に襲われてることでしょうなぁ」 

 

 そういうと、ハッとした顔をして口元を抑えた。 

 

 「そ・・・・そうなの、叫ぶの、痛い、苦しいって、そして、そして殺してって懇願してくるの・・・・・・」 

 

 「こりゃあ、急いだほうがいいでしょうなぁ」 

 

 「それじゃあ受けてくれるの!?」 

 

 「んんん~、これは西園寺家からの依頼ですか?それとも西園寺愛さんからのご依頼ですかねぇ?」 

 

 「西園寺家から六条家、六条一輝に依頼が行く事はないわ」 

 

 苦虫を潰した様な顔をする愛。 

 

 「だから、私からの依頼よ!家からではなく!私個人からの!」 

 

 「なるほどなるほど、まぁいいでしょうや、お代の方はまた後で、じゃあ西園寺家までいきますか。狂さんいる?」 

 

 ざっと影が目の前に現れる。 

 

 「ここに」 

 

 「治療の話・・・・聞いてました?最悪西園寺と戦闘になります。貴方の仕事は治療中、誰も俺に近づけん事です。わかってますね」 

 

 「御意」 

 

 こうして西園寺家まで車で移動し、西園寺本家に到着した。 

 

 門が開かれると、一人の老婆がたっていた。 

 

 「折角きてもらって悪いが、お引き取り願うよ。」 

 

 「おばあちゃん!!」 

 

 「六条とこの坊主だね?治癒に目覚めたか知らないが、昨日今日力に目覚めたアンタに治せる程、うちの子はいい状態じゃなくてね。悪いが帰ってもらおう」 

 

 「う~ん・・・・・俺は西園寺家からの依頼ではなく、愛さんからの依頼できているので」 

 

 「力づくで追い出すといったら?」 

 

 「困ったお客様だ、その場合俺が治療する人間が最悪増える事になりますなぁ、もっとも生き延びればの話ですが」 

 

 そういった瞬間、横にいる狂が闘気を爆発させた。 


 おばあさんも焦った顔をして、ため息を吐き。 

 

 「治せるのかい?」 

 

 「ただ様子を伺いにきたボンクラ聖人や聖女とは違うとだけは、お答えします」 

 

 観念したかのように肩を落として、おばあさんは道をあけてくれた。 

 

 「あの子を見て・・・・救ってやっておくれ・・・・」 

 

 願いの籠った一言だった

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