いぬに小判

あしはらあだこ

第1話

 こちらも、桃太郎に出会えなかった。

 いぬは人と一緒でないと、生きてはいけなかったので、新しい、ご主人様を探しに出かけた。


 うわあ~!!!きれいな花がさいてるう~。

 いいいにおい~

 ぼくこういう香り好き~


 すると、一人のおじいさんが、涙ぐんだ様子で、花を見ていた。

 どうしたの?

「シロ、シロじゃないか!!!」

 いや、ぼく違うし・・・

「いや、ごめんよ。シロが戻ってきてくれたのかとおもったが・・・生き返りだったらなあとおもったまでさ」

 その子は、ぼくみたいな雰囲気だったの?

「いやあ、それはいい子でな。お前みたく優しい目をしていたよ」

 そうなんだ・・・おじいさんさみしい?

「どうだい、この花。シロが咲かせたのさ」

 死んじゃった子がどうやって?


 おじいさんにことの顛末を聞いたいぬは、一緒に泣いた。

 ねえ、ぼく、シロの代わりになれないかしら?

「えぇ?お前がかい?お前にも、飼い主がいるだろう?」

 う~ん、桃太郎と約束があったんだけど、来なかったんだよ・・・

「え?桃太郎だって?あの子なら、桃に乗り遅れてしまった、とかぜのうわさに聞いたが・・・?」

 はあ~?どおういうこと?じゃあ、いったいぼくはどうしたら・・・?

「仕方ない。一人ものどうし一緒にくらすか?」

 わあ~、いいの~?うれしすぎて、しっぽが痛いぐらいだよ!!!

「それじゃあ、さっそくだが、川へ網を見に行こう」

 わ~い。たくさん獲れているといいねえ~

「いやいや、足るを知る、と言ってな、必要な分が獲れていればいいんだよ」

 ふ~ん?そうなの?ぼくはいつも、おなかがいっぱいになるまで食べちゃう。

「くいしんぼうだの。まあ、わしは年寄りだから、そんなにたくさんはいらんのよ」


 その日は、おじいさんと魚を仲良く分け合って、一緒に寝た。

 次の日は、畑を耕すという。

 その次の日は、うさぎを捕まえに山に入ったが、うまくいかなかった。

 そんなふうにして、毎日を、おじいさんと穏やかに暮らしていた、ある日、いぬは夢を見る。

(ぼくは、シロ。おじいさんと一緒にいてくれて、ありがとう。ひとつお願いがあるんだ。おじいさんに伝えたいことがある。明日から、少し変だな?と思っても、その通りに行動してほしい。よろしく頼むね)

 ふ~ん。シロくんは、なくなってまで、おじいさんのことを思っているんだね。

 ぼくも、おじいさんすきだし。うん、わかったよ。


 次の日、どうしても、木の根元を掘らないと気が済まなくなった。

 これが、シロくんの言った変な感覚だな。でも、その通りにと言っていたし、と思い、掘ってみることにした。おじいさんが

「これこれ、そんなんでは、怪我をするじゃろ。わしが、鍬で掘ってやろう」

 すると、小判がたくさん出てきた。

「もう、いいんだよ。シロ」

 え?シロくんが言い残したことが、わかったの?おじいさん?

「あれは、きっとわしに恩をかんじているのだよ。でも、恩ならもう十二分に返してもらったから、とシロに伝えてくれないかい?」

 うん、わかったよ。シロもきっと、ずっとおじいさんと一緒にいたかったんだね。


 数日すると、シロがまた夢に出てきた。

(おじいさんに、ぼくがいつもそばにいると、伝えてほしいんだ)

 うん、わかったよ。

 次の日、特に変わったこともなく、そのまま、次の年の、春を迎えた。

 去年咲いた花がさくことはなく、おじいさんは、がっかりしていた。

 すると、いぬは、竈の灰を鼻にくっつけて、おじいさんに、思い出させようとした。

 おじいさんは、感づいて、半信半疑ながらも、竃の灰を木に撒いてみると、なんと、またもや花が咲いた。

「あぁ、シロ。おまえは、いまでもわしと一緒だな・・・」

 おじいさんは、涙を流していたが、以前見たそれとは違う気がした。

 あぁ、シロくん。きみは、いつまでもおじいさんを見守っていてくれるんだね。

 そんな、感傷に浸りながら、いぬは灰のせいで、ひとつくしゃみをした。

    

                      つづく・・・かどうかはわからない

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いぬに小判 あしはらあだこ @ashiharaadako

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