大聖女が国を追放された結果、傲慢な貴族は破滅していった

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 とある国には、偉大な聖女がいた。

 誰からも慕われ、誰にでも手を差し伸べる。

 そんな聖女の中の聖女が。


「あんな優しいお方は他にはいないわ」

「とても慈悲深い方だ。尊敬してしまう」

「本当に聖女と呼ばれるにふさわしい方ね」


 大聖女と呼ばれたその聖女の名前はミクリア。


 ミクリアは様々な人々に、分け隔てなく手を差し伸べた。


 しかしそんなミクリアは、とある出来事で責任を追及されてしまう。

 それは、傲慢な貴族の我儘に付き合わなかったせいだ。


 聖女の仕事は、闇の魔力で汚染された地域の浄化や、狂暴化した魔物の浄化、人々を癒す治療、人々を守る護符の政策など多忙を極める。


 しかし、そんな聖女達を支援しているのは、貴族達。

 だから、聖女達は本来の仕事よりも、貴族達の頼みを優先しなければならない事があった。


 汚染地域の見物に何十人もの聖女をひきつれて出かけたり、

 自信の力を誇示するために聖女を護衛につけながら、狂暴化した魔物を狩りでかけたりした。


 そんな事をする貴族達は、大聖女すらもいいように扱う事が多かった。


「俺達がお前らを支援してやってるんだ。俺達の言う事を聞くのは当然だろう」

「俺達がいなくなったら、お前達は活動できなくなるんだぞ。ならこっちの都合を優先しろ」


 昔はそうでなかったが、ここ数年貴族が聖女達に支援金を送る事がふえたため、そうなってしまっていた。





 そのため、


 決定的な瞬間が訪れるのはそう遠くない日だった。


 観光名所にて災害に巻き込まれた貴族達は、あきらかに軽傷であるにもかかわらず、聖女達に無理を言って自分達の治療を優先させた。


「とるにたらない一般市民達より、お前達に協力してやっている俺達を治すのが先だ!」

「そうだ! 平民なんてほうっておけ!」

「俺達を治さないというのなら、もう金なんてやれないからな」


 そんな事を言う貴族達に反発したのが大聖女ミクリアだ。


 大聖女は、己の信念に背く事なく、災害にまきこまれた一般人達の治療を優先した。


「命の尊さは誰であっても、変わりません。身分や権力で変わるようなものではないはずです」


 そんな大聖女をよく思わないものは、少なくなかった。


 その結果、大聖女ミクリアは国を追放されたのだった。


 貴族達は、これで自分たちに逆らうものはいなくなったと思ったのだが。


 その行為は、他の聖女達や、ミクリアの力で助けられた者達の逆鱗に触れることになった。







 怒り狂う民達は、暴動を起こして、貴族達を追いつめていく。


 怪我をして、血を流す貴族たちが大勢いたが、平民たちは彼らを助けなかった。


 命乞いをすり言葉には耳をかさず、取引をしようとする者たちには、力で黙らせた。


 己の間違いを認めろという声が大きくなる、が貴族は口をとざしたままで、謝罪はなかった。


 死体は、増えるばかりだった。


 罪を認めるどころか、身代わりを差し出して逃げようとする貴族、家財道具を持ち出し隠し通路から国を脱出しようとする貴族もいた。


 そんな貴族たちがすっかり少なくなった後、平民たちに良心的な貴族が現れて、生き残った貴族達を統率するようになった。


 平民たちの力におびえて、隠れていた中立の彼等は、その貴族が作った交渉の場で、聖女や平民を理不尽に差別したり、虐げたりしないと誓った。


 そこで、国に吹き荒れていた暴力の嵐は収まった。






 そこから徐々に穏やかさを取り戻していった国は、数年かけて追放された大聖女を探し出し、生まれ変わった国へと再び迎え入れたのだった。


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大聖女が国を追放された結果、傲慢な貴族は破滅していった 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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