第14話
さて今は金曜日の朝、俺はフライパンと対面していた。
現在時刻は6時と30分。なぜ普段より早起きして朝ごはんを作っているのかというと、今日から休みだからだ。金曜日なのに休んでいいんですか…?
大型連休の初日、スタートダッシュを切るためにわざわざ早起きして朝ごはんを食べようと思う。
今日は秋津も朝には来ないはず。というのも昨日は営業課の仲良い同期と飲みに行くとチャットが来ていたからだ。業務中に社内チャットでそんなことおくってくるな。
冷蔵庫から卵を取り出すとボウルに割っていく。最近は値段が高騰してもはや高級食材となりつつある卵をふんだんに使っていく。
味付けは塩コショウだけ。トースターに食パンをセットするのも忘れない。
俺が住むマンションの近くにはとんでもなく美味しいパン屋さんがある。残業まみれの俺をもってしても食パンの回数券を買ってしまうほどには美味しい。
あ、パンも無くなるし実家から帰ってくる時に買ってこよう。
温めたフライパンの上で油が跳ねる。火の勢いを落とすと卵液を一気に流し込む。
はじめはスクランブルエッグを作る要領でフライパンに箸を滑らせる。静かな休日の朝にフライパンを回す音が響く。
なんで卵ってこんなに美味しそうなんだろう、いや実際美味しいんだけど。
少し固まり始めたら縁からはがし、奥側に寄せていく。そのまま少し待ってフライパンの丸みを使って形を整える。
最後に箸を支えにしてひっくり返せばオムレツの完成だ。ツヤツヤと輝きを放つ黄金色のそれを見るとごくっと唾を飲みこまざるを得ない。
ちょうどパンも焼けたところだ。平皿にパンとオムレツを盛り付けるとダイニングテーブルに運ぶ。おっと冷蔵庫からジャムを取り出すのも忘れない。
「いただきます」
1人で手を合わせる。オムレツにケチャップをかけると先程卵を巻くのに使っていた箸で割る。洗い物なんて少ない方がいいに決まってる。
中は少し固めの半熟、たまご本来の甘みにケチャップの酸味がよく合う。
ブルーベリージャムの蓋を開ける。パンを1口分ちぎるとスプーンでこんもりと塗っていく。ブルーベリーって青いのに甘いの、なんか騙された気になるな。
そんなことを考えながらパンを口にする。やはりあのパン屋は最高だ。
このジャムも相澤さんが家族旅行のお土産でくれたものだ。実家帰省するし事務課にも何か買ってこよう。
ゆっくりと朝ごはんを堪能すると、俺は新幹線で帰省すべく鞄に荷物を詰め始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます