十二単と野生児…③

爺さん和尚が二人と一匹を出迎えた時に

よう来たの…ん~~まずは本堂においで

婆さんや大福を風呂に入れておくれ


ハイハイ…大福ちゃん、待っていたのよ

婆さんが物書きから、私の入ったキャリーケースを受け取った

どうやら、呑気な親父から話を聞いたのか?

……苦手な風呂に入る事になったぞ! 物書き



本堂に爺さん和尚と物書き、野生児が対面をする


さて、野生児よ

柔和な表情の爺さん和尚が、真顔になり野生児に話しかける


大福から、香の香りがしとる…まぁ、二人の家は出る家じゃけいな…霊現象は不思議な事はないがなぁ

ただ…野生児よ。何をしおった、何処かに行きおったな


野生児はポツリポツリと話を始めた

物書きは静かに聴いている


……そうか。物書きよ、じきにポルターガイストは収まるじゃろう。しかしなぁ…野生児と大福はお祓いが必要じゃろう

しばらく、修業しなさい

野生児、部屋から娘御を追い出すんじゃない

娘御を成仏させるんじゃよ


わかった…だけど…なんで俺の部屋に住み着いたんだよ


その娘御に惚れられたからじゃよ

大福に祓われるたびに、気持ちが強うなったんじゃよ…物書きよ、大福の飼い主ならば、大福を大事にせいよ


ごめんなさい…お爺さん、ただ…僕にも見えてしまうんだ


双子だからじゃよ

お前なら、娘御をどうするかな?

よく考えなさい


爺さん和尚が私を抱き上げ、猫吸いをする…ん~~

少し、香りが消えたのう

ゆっくりと過ごすと良い…それが、お前のお祓いじゃよ

とニッコリと微笑み、母さんのいるところに連れて行った

そして、今にいたる

本堂にはバシッンと、肩を叩く音が響いている


ファ…ん~~

母さんの世話が終わり

婆さんが、オヤツを持って来た時

母さんが本堂の外を見つめ…フゥオオオと威嚇をした…私も同時にフゥオオオと威嚇


どうしたんじゃ?サクラモチに大福よ…

爺さん和尚がやって来た


アラアラ…二人とも大丈夫ですよ

向こうでオヤツにしましょうね

婆さんはハーネスのヒモを持ち、台所に連れて行こうとする


フゥオオオ…

二匹の威嚇が止まらない


やれやれ、野生児を見つけてしもうた

物書きよ…婆さんの手伝いをして、サクラモチと大福を台所に連れて行っておくれ

野生児は座禅をくんだままじゃよ…


お婆さん、二匹を抱えます

物書きは軽々と二匹をブックエンドにして

台所に婆さんと向かった


そこの娘御よ…気の毒じゃが孫に会わすわけにはいかんぞ

元いた場所に戻るんじゃ…そなたはこの世の者ではないからのう

と言って、爺さん和尚は十二単の娘御を成仏させたんだにゃん…とにかく、爺さん和尚のお祓いは強烈だからにゃぁ~


二日後に帰宅した…野生児の部屋に十二単の人は出てこにゃくなった

野生児もホッとして、自室で寝るようになったにゃん




夏休みが終わり、学校が始まる

久しぶりに友人に会い、Yさんの事を聞いてみた


Yさん?そんな女の子は知らない

何処の学部の娘かな?


会う人、会う人、の反応は皆、同じ…

ただ一人だけ…


Yさん、前期試験の辺りに心霊スポット巡りして

…その当時、一年生だから…先輩になるね

行方知れずになったままらしいよ

と同じ学部のガールから聞いた


嘘だろう…

固まる野生児…


前期試験の最中に、Yさんの妹とカラオケに行ったじゃない…妹さん、何処の田舎で姉が消えたって



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る