3.なし崩し的にというより飯崩し的に④
ついでにグイッと伸ばされた手で、服の胸元を掴まれて引き寄せられて、後頭部を押さえつけるようにされて……く、唇をっ――。
「っ、んんっ――」
ひゃーっ!
ちょっと、待って。
ちょっと待って。
私、今、唇を――塞がれてません!?
彼は私の唇を塞いだまま――そればかりか、わ、割とこう、しつこくないですか!?
そのままたっぷり20秒近く。
息つぎ、どうしたらいい系ですかっ。
しゅ、シュノーケル持ってきてくださいっ。
とか思っていたら、ようやく唇を離してもらえて……途端、私はヘナヘナと机の上に突っ伏してしまった。
か、身体に力が入らないっ。
……多分酸欠でっ。
断じて気持ちよくて、とかそういうのでは……ない!と……思い、たいっ。
思わず顔を伏せてしまったものの、今度は恥ずかしくて前が向けなくなってしまった。
お吸い物、冷めちゃう……。
いや、待って。何で今それ?ってことを思いながら、そのままの状態であれこれ考えてみた。
えっと、今のって――どんなに客観的に見積もっても、キス、で合ってます、よ、ね?
そ、それもっ、ディ、
頭が混乱するあまり、苦手なはずの英単語が脳裏をよぎってこれはいよいよ良くないぞ、とか思ってしまう。
あ、私、同じ文学部でも英米語学科の学生さんのこと、かなり尊敬していますっ!
って今はそんなことはどうでもよくてっ。
唇にご飯粒とかついてたから取ってくれました、とか、だったりし、ます?
恐る恐る顔を上げて
「例え
ってそれと今の
そんな怖い顔して見つめられても私、誤魔化されませんからね!?
「私っ、ファーストキスだったんですけどっ」
何だか悔しくて涙目でつぶやいたら、「大いに結構じゃないか。夫が初めての相手とか。
とか。
だからそうじゃなくて――!
〝俺的には〟っていうのも気に入らないですけど、百歩譲ってソコは目をつぶったとしても、です。
「う、なぎ……」
ボソリと恨みがましくつぶやいたら、さすがにどういう意味だか分からなかったらしくて、
「うなぎの……味がしました……」
小さくポツンと。
「わ、私のファーストキス、うなぎの味だったんですよぅっ!」
それが大問題なのですっ!
いくら大好きでも初めてのキスの思い出がうなぎと直結は悲しすぎる。
「理想は桃の香りとかレモンの香りだったのにぃーっ!」
乙女の夢を返せぇーーーっ!
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