閑話 それぞれのラブストーリー

第102話 ・・・★ シウのプレゼント

 ・・・★ シウ視点


 今年はユウと恋人同士になって初めてのクリスマス。昼間はユウのご両親に挨拶を兼ねて墓参りに行くのだが、夜は二人きりのクリスマスを過ごす予定だ。シウは事前に和佳子に相談して色々と計画を立てていた。


「あのね、結局男の人って物よりも行為、エッチなサプライズの方が喜ぶと思うんだ。もちろん料理とか作ってあげたらそれなりに喜ぶけど、私の彼氏は私が作ったビーフシチューとオムライスよりもミニスカサンタの方が興奮してたよ?」

「ミニスカサンタ……!」

「そう、エロ可愛い下着を着てサンタコスしてあげたら、スゴく喜んでくれたよ♡」


 そう言って和佳子は去年着た写真を見せてくれた。

 真冬にも関わらず水着みたいなサンタの格好にミニスカを着て、でもフワフワのポンチョが可愛いらしくて、とても似合っていた。


「ちなみに今年はバニーさんをするよ! シウはどうするの?」


 せっかくなのでユウが喜びそうなコスプレを選びたいけど、何がいいだろう? 結局温泉の時もすぐに下着を脱がされて、あまり見てもらえなかった気もするので、ペアのマグカップとか記念になる食器を買った方が喜ぶ気がするとシウは考えていた。


「いやいやいや、シウは分かってないなー。男っていうのはさー、自分の為にエロい下着を用意してくれたって気持ちが嬉しいんだって」


 和佳子が検索した画面を覗き見ながら、瀬戸が割り込んでいた。


「ちなみに俺はこの透け透けのTバックがいいなー。エロいの最高」

「………瀬戸、あんたって本当に最低ー」

「え?」

「そんなデリカシーで、よく寿々さんに愛想を尽かされないね」

「えぇ……⁉︎」


 何が悪いのかもさっぱり察せない瀬戸は一人でアタフタ喚いていた。

 セクハラだけど、瀬戸、貴重な意見をありがとう。シウは涙目になった瀬戸に心の中で感謝をしつつ、ユウ好みのエロコスプレを探してみた。


 とは言いつつ、一応ユウのご両親の命日だ。そんなに羽目を外さない方がいいだろう。最初は「プレゼントは私……♡」とリボン調の下着を着ようかと思ったけど、あまりにも過激すぎると却下した。

 次にユウが見ていた女子校生モノのAVを参考にセーラー服を検討したけど、ただエッチなだけな気がしたので却下。全くクリスマスが関係ない。


 そうなると無難にサンタのコスプレがいいのだろう。予算があるのでパーティーグッズで売られているような廉価版しか買えないのが残念だけど、瀬戸の意見を参考にエッチな下着を仕込めば喜んでもらえるかもしれない。

 あとはユウとお揃いのマグカップを買って、一緒に温かいココアを飲もう。


「ユウは喜んでくれるかな?」


 料理はバタバタするだろうから、予めパスタとピザの材料を購入して一緒に作ろうと予定を立てていた。あとはユウが予約してくれたケーキを二人で食べるのだ。

 考えただけでドキドキする。そもそも恋人同士ってシチュエーションだけでも嬉しくて涙が出そうだ。


「ねぇ、和佳子。好きな人と一緒にクリスマスを過ごせるって、本当に幸せだね」

「シウ……! うん、そうだよ。めちゃくちゃ幸せなことなんだよ! だからシウ、今年のクリスマスは思う存分楽しんできてね!」


 そんな和佳子にシウは笑顔で応えて、ニヤける口元を隠しながら計画を立てていた。


「………あれ、そういえば瀬戸。寿々さんって予定日いつだったっけ?」


 ふと思い出したようにシウは尋ねた。あまりにも瀬戸が普通過ぎて、すっかり忘れていた。


「えっとねー、確か1月下旬か2月……? 少し大きいみたいだから早まる可能性もあるみたいだよ?」

「そうなんだ。それじゃ、今年はお腹の中の赤ちゃんも一緒に家族で過ごせるんだね」


 そんなシウの言葉に瀬戸はブワっと泣き出した。


「シウ……っ、お前さー! そんな悲しいことを言うなよー! でもうん、寿々のお姉さんが引き取ってくれるからいつでも会えるっていえば会えるんだけどさー……」


 あ、そうだった。瀬戸達は養子に出すから母親と父親ってことを堂々とは言えないんだった。失言だったと謝ったけど、そんなシウの行動を止めて和佳子は改めて瀬戸に言った。


「ううん、シウの言う通りだよ。本当だったら不幸な目に遭っていたかもしれない赤ちゃんなんだから。瀬戸は感謝をしながら赤ちゃんと最初で最後のクリスマスを過ごした方がいいよ? ここまで無事に大きくなってくれたことへの感謝。そしてその赤ちゃんを瀬戸達の代わりに育ててくれる里親への感謝。そして不甲斐ない自分達を許してもらう為に、一緒に過ごせるうちにたくさんの感謝を赤ちゃんに伝えるんだよ?」


 いつになく真面目な和佳子に、流石の瀬戸も黙ったまま頷いていた。

 確かに和佳子の言う通りだった。こうして瀬戸が笑っていられるのも、色んな幸運の積み重ねだ。この結果を当たり前だと考えるには、あまりにも軽率な行動をしたのだと言うことを自覚してほしい。


「とりあえずさ、寿々さんとお腹の赤ちゃんの為に素敵なクリスマスを計画立てなさいよ? エロいことばっか言ってないでさ!」

「いや、エロいことを計画していたのは和佳子とシウで———……」


 ギロっと睨みつける和佳子の視線に気付いた瀬戸は、黙ったまま何度も頷いていた。うん、がんばれ、瀬戸。


 こうして各々は当日を心待ちにしながら、着々と準備を始めていた。


 ・・・・・・・・・★


「彼氏へのプレゼントとは別にシウにもプレゼントしないとねー♡ ユウさんとの熱ーい聖夜を過ごしてもらう為に……ふふふー♡」


 和佳子ちゃんのプレゼントが気になりますw

 とりあえず次回はユウシウのクリスマスですw


 次回の更新は6時45分です。


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