第35話 ★・・・私が悪いんじゃない。群がる男が悪いのだ
自分で言うのもなんだけど、私ほど可愛い子はそういなかった。
くっきりした目鼻立ちに長い手足、一回り小さな顔と抜群のスタイル。艶々の髪を靡かせて目の前を通ればホラ、男なんてイチコロ。
「ねぇイコ。野球部の野村先輩に告られたってマジ?」
「んー……うん、そうだけど? もしかして
「いいなーって思ったけど、もう寝た? どうだった? うまかった?」
「えー、悪くはなかったけどー……ちょっと独りよがりだった気がする。もっと前戯をして欲しかったかなー」
「それ最悪。んじゃ、もういいや」
真面目ちゃんが多い中、性に抵抗がない凛とはよく一緒に過ごしていた。二人で授業をサボったり、ナンパされに街に行ったりしたものだ。
「イコはさ、色々親に言われたりしないの? もっと真面目にしろとかさー」
「うるさいはうるさいよ? でも基本的に無関心だから、家でお利口さんにしてたら問題ない感じ」
きっと自分の娘がこんなに遊んでいるなんて、夢にも思っていないだろう。とはいえ、イコの両親も20歳で産んでいるため、もしかしたら若い時にはヤンチャをしていたんじゃないかと勝手に考えていた。
「ちゃんと避妊さえしていれば問題ないでしょ? 出来たら出来たで孫ができたーって喜んでくれるかもしれないし?」
その日も凛と一緒に街へと遊びに行ったのだが、彼氏に呼び出されたとさっさと帰ってしまった。一人残されたイコは退屈そうに街を徘徊していた。色んな人がいるけど、皆つまらなそう……。
『可哀想。個性のない人ばかり……私は絶対、あんな大人にはならない』
自分は特別なんだ。何でも思い通り。私がこれをしてと言えば喜んで尻尾を振る人間ばかり。皆、私のご機嫌を取ろうと必死なのだ。
今だってそう、皆が興味深そうにチラッと私を羨望の眼差しを向けていく。
「ねぇ、君……いくつ?」
声を掛けられ振り向くと、そこには脂ぎったハゲたオジさんが立っていた。掛けているメガネが曇っていて、その奥が見えなくて何を考えているのが読めなかった。素性も思考も分からないオジさんに、イコはひたすら恐怖を覚えた。
「オッサンに関係ないでしょ? 早くどっか消えて?」
嫌悪感を露わにして立ち去ろうとすると、そいつは財布からお金を出して見せてきた。
「三万でどう? ね、ホテル代も別に出すから」
コイツ……私のことをお金で買おうとしてる?
確かに提示されたお金は魅力的に見えた。だがこんな気持ち悪いオジさんとエッチはしたくない。早く逃げようと踵を返した時、いきなりオッさんが手を掴んで下半身を触らせようとしてきた。
「どうせ遊んでるんだろ、このアバズレが……! メスの臭いをプンプンさせておきながら勿体ぶるなよ、なぁ?」
き、気持ち悪い!
必死に抗って逃げようとするけど解けない。誰か助けてと周りを見回したが、誰一人として気にも掛けてくれなかった。
最低だ、こんなの……!
目を瞑って覚悟を決めた時、急に暗くなったかと思ったらオジさんが「ギャっ」と情けない声が漏らした。
「こんなはした金で可愛い子にご奉仕してもらおうなんて、オッちゃんズルいねー? いくらお金を出してもダメダメ。こういうのは双方の同意が大事だからね?」
その人は———逞しい体格で周りのどの男とも違う雰囲気を纏っていた。パッと放されたと同時に逃げ出したオジさん。その光景に思わず助かったと胸を撫で下ろした。
「しかし君も不用心だな。こんな時間に君のような可愛い子がいたら男が勘違いしても仕方ない。心配だから俺が直々に家まで送ってあげよう」
「え、ナンパ? せっかく感心していたのに」
「これの何処がナンパなんだ? 心配してって言っただろう? 善意だよ、善意」
凛々しい力強い眉に黒目がちな瞳。オールバックに上げられた前髪と高そうなスーツとコートを羽織って、いかにも勝ち組の
「まぁ、君が俺に感謝しているのなら、食事に誘うこともやぶさかではないが……どうかな?」
「なんだ、やっぱナンパじゃん。いいよ、オジサンはカッコいいから」
「ん、一応今年で30歳なんだが、君から見れば立派なオジサンになるのか」
「———いいよ。オジサンなら一緒に遊んであげる」
するとその人は顔を顰めて腕を組んだ。
「守岡だ。
「……私はイコ。よろしく、ミチさん」
こうして私達は出逢ってしまった———……後になれば後悔しかないのだけれども、きっと私は何度やり直すことができてもミチを求めるのだろう。
・・・・・・・・★
「後悔しかない人生だけど、その時の貴方はキラキラと輝いて見えたんだ」
満を持して登場しました。イコの本命です。
そう、シウとユウも歳が離れていますが、イコも年上の男に恋をしていた一途な女の子でした……(過去形)
次の更新は12時05分を予定しております。
続きが気になる方は、フォローをよろしくお願いいたします。ちなみにR15なのでご了承下さい💦
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます