1-11 サークル活動

6月21日 土曜日

 今日は今月2回目のサークル活動日だ。活動内容は1回目と同様に河川敷のゴミ拾いだ。

 だいぶ気温も上がってきており、外を歩くだけでじんわりと汗が滲む季節だ。

 里見と駅で待ち合わせしている。午前10時になろうとした時に駅に着いた。

「おはよう、今日は暑いね」

「お、おはよう、夏って感じだね」

「こんな日にゴミ拾いか、きついね」

「で、でも、それでBBQする人とかが快適に慣れば」

 そんな会話をしつつ改札を通り駅のホームへ降りる。

 今日は前回よりも少し大きな川でのゴミ拾いだ。


 電車で30分ほど移動する。揺られながら景色の移り変わりを見ていると里見が話しかけてくる。

「ねえ、バイト始めたんでしょ。楽しい?」

「うん、楽しいよ。それなりに覚えて来たところかな」

「いいなー、私も何かやろうかな?」

 里見は一人暮らしだが実家からの仕送りが手厚いようで、私よりも広い部屋に住んでいる様子で、食費、交友費なども全て仕送りで賄っている。

「里見は何が好きなの?」

「そんなこと言われてもなぁ、飲食店は嫌かな、忙しそうだし」

 それには私も同意見だ。優子の話を聞く限りではやはり夜や土日は忙しそうだ。

「何か、こう、クリエイティブな仕事がいいな」

「クリエイティブ?」

 思わず聞き返した。

「地味な作業とか、命令されるだけの仕事は嫌かな」

 里見はそういった。世の中の大半はそういう仕事だとは思うが、あえて私は何も言わずに頷いた。

「茉莉花は将来的にどんな仕事がしたい?」

「私は、ううん、なんだろう。改めて言われると何も思い浮かばないや」

 将来の夢、仕事、それは生きてる上で来て然るべき現実だ。本音を言えば文学に関わる仕事がしたくて文学部に入ったが、だからと言って得意な分野があるわけでもなかった。里見の何気ない質問に対して言葉が詰まってしまった。


 そんな話をしていると目的地の駅に着いた。駅から出て10分ほど歩くと広い河川敷に出た。

 先輩たちの姿を探す。少し遠くにいたようだった。

 手順は前回と同じで、指定の区域を広い交代で休憩を取る。

 

 私と里見含めた1年生、2年生組は河川敷を降りた川に近い部分から土手付近にかけて細かいゴミも見逃さずに拾い続けた。

 黙々と作業すること2時間、佐野さんに声をかけられた。

「おお、しっかりとしてて偉いね」

「さ、佐野さん、お疲れ様です」

「俺たちもある程度終わったからご飯にしていいよ」

「わ、わかりました」

 今日はBBQをしたりなどはしないので、私と里見は近くのファミレスでお昼を取ることにした。


 メニューを見て、適当に注文する。

「ねえ、あんたさ、佐野さんとはどうなのよ」

 不意に聞かれ、水が喉に詰まる。

 むせかえる私を見て、里見はやれやれと言った様子だった。

「その調子じゃ進展はないようね」

 里見はなかなかに鋭かった。

「これと言って何か誘う口実もないし、サークルは月に2回くらいだし」

「そんな事ばっかり言っててもどうにもならないわよ、私が狙っちゃうぞ」

 確かに私よりも里見の方が可愛いし、そう言われると何も言い返せないが、気持ちでは負けたくなかった。

「わかった、食事に誘ってみる」

「おお、思い切ったね」

 完全に里見のペースに乗せられてしまっていた。

 食事が運ばれて来たので、手をつけながらしばしの休息と談笑を楽しんだ。


 午後16時、今日の活動が終了した。

「みんなお疲れ様、これ一本ずつ持っていってよ」

 そう言われ、皆にエナジードリンクが手渡された。

 なぜか、鼓動が早くなる。脳があのドリンクを見ただけで興奮しているような感覚に襲われる。早く飲みたい、少しでも口に含みたい、気づけばそんなことを考えていた。

「おーい、茉莉花、大丈夫?」

 里見の声で我に帰った、私はどうしちゃったのだろうか。

「ご、ごめん、少し疲れただけ」

「ボーとしてたよ、疲れたなら帰ろ」

 そういいドリンクをもらって、佐野さんに挨拶をして帰ることにした。

 もっと話したいが今日、このタイミングでは難しそうだった。

「ねえ茉莉花、これ飲んだことある?」

「う、うん、少し」

「そうなんだ、なんか怪しいし、私こういうドリンク苦手だからあげる」

 茉莉花にとっては嬉しい話だ、なんせ結構な値段がするからだ。

 里見は飲んだことがないらしい、おすすめしようとも思ったがやめておいた。

 家へ帰り、夕方の事を思い出す。少し不安に駆られたが、ドリンクを飲めばすぐにどうでも良くなっていた。

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