3話
「着きましたー!」
両手を広げ、到着の喜びを表す雅
雅とクリスタルが訪れたのは、冒険者たちが集まる街【アルノデ】
冒険者ギルドや、冒険者御用達の武器・防具を扱う店が多く立ち並ぶ
「なんだかヨーロッパに来たみたいです!」
「ヨーロッパ?」
「あ、いや、なななんでもないです」
思わず口を滑らせたが、クリスタルは微笑むののみで追求してはこなかった
『雅ちゃん!気をつけなきゃだよ!』
(ごめんなさい…)
小声で謝り、シュンと肩を落とす
『ま、まあ次から気をつけよう!ここから200m直進すると、右手にオススメのカフェがあるよ!』
言い過ぎたと、慌てて話題を転換し、雅が笑顔になったことに安堵する
「クリスタルさん!向こうにカフェがあるんですけど、ランチにしませんか?」
「そうなのですか?それはいいですね、ただ私には持ち合わせがなくて…」
長年泉の精霊として過ごしていたクリスタルには、カフェでランチする余裕など皆無だった
「そ、そういえば私もそんなお金持ってなかったかも…」
リュックの中からピンクの財布を取り出した、中には3250円入っている
「クリスタルさん…これで2人分足りそうですかね?」
「う〜んと…それはなんですか?」
「へ?」
『雅ちゃん!この世界ではそのお金は使えないんだ!ランチする分くらいの、持ち合わせはあるから安心して!』
この世界では日本円は使えない、この世界で流通るのは、【テリア】と呼ばれる通貨だ。
なのでステちゃんの能力で、事前に雅の所持金と同額のテリアを準備していた
ホッと胸を撫で安心する雅
「あ、えっと、これは間違いで、カフェのお金は私が出せるので、ランチしましょ!」
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えさせてもらいますね」
お金の問題を解決した雅とクリスタルは、ステちゃんオススメのカフェへと向かう
「なんだか、私たちとっても注目されている気がします」
カフェへ歩いていると、道行く人々(ほぼ男性)が、こちらに視線を向けていることに気付く、その眼差しは、有名人に対する憧れを持ったものではなく、どことなくいやらしさの籠ったものであった
「そうですねぇ、独特な格好のせいでしょうか?」
クリスタルの仰る通りで、ただでさえこの世界では馴染みのない、雅の学生服、クリスタルのビキニとくれば、嫌でも注目されてしまう
(クリスタルさんがえっちな格好してるからかな?)
(雅さんの見慣れない服装のせいでしょうかね?)
この2人、自分の格好の異質さには気付く由がない
下賎な視線に晒されながらカフェに到着
カフェの扉を開け中に入る、カランカランと扉に取り付けられた鈴が、2人の入店をお知らせする
「いらっしゃいませ」
店内に入ると、白髪頭に茶色いベレー帽を被った、人柄の良さそうなお婆さんが迎えてくれた
お婆さんに案内され、テーブル席に着席する
「うわぁ!美味しそうなメニューばっかりで迷っちゃいます!」
メニューには、雅の見た事のない物ばかり
「美味しそうなメニューが沢山で、目移りしてしまいますね」
雅はパスタ、クリスタルはグラタンを注文した。
正確にはパスタやグラタンに似た何かだが
「ん〜!とっても美味しいです!」
「ほんとですね、こんなにも美味しい食べものは初めてです」
異世界から来た雅にも、泉で暮らしていたクリスタルにとっても、大満足のランチとなった
お会計は雅持ち、ステちゃん曰く支払いは大丈夫とのことだったが
(ステちゃんどうしたらいいの??)
『大丈夫!レジのトレーに手をかざして!』
(こ、こう?)
ステちゃんの指示に従い、トレーに右手をかざすと、お金がトレーに落とされた
「はい、ありがとうございました」
無事にお会計を済ませ店の外に出た2人は、今後の資金についての相談を始める
「正直、もう少しテリアの持ち合わせは必要でしょうね」
「そうですね…魔王を倒す旅も、すぐに終わりそうもないですし…」
雅とクリスタルは、互いに考え込んでしまっていた
『雅ちゃん!ギルドで冒険者登録を済ませて、ダンジョンに挑戦してみるのはどう?』
(だんじょん??)
『そう!ダンジョンは特殊なエリアが広がっていて、魔物が沢山いるんだ!』
(えええ!あのお魚さんみたいなのが沢山!?)
『うん!魔物を倒すとアイテムをドロップする、そのドロップアイテムは、ギルドでテリアに換金出来ちゃうんだ!』
(ドロップ?飴になるの?)
『じゃなくて!アイテムを落とすってことだよ!』
(ええ!だんじょんってすごいね!)
ステちゃんの提案に賛同した雅は、そのままクリスタルにダンジョン探索を提案、クリスタルも快諾し、2人は冒険者登録を済ませるべくギルドへ向かった
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