介護のクズ
@nanashi9601
はじめに
皆さんは、介護と聞いて、何を想像しますか?
『きつい』『汚い』『危険』『給料が安い』『暗い』
いわゆる、介護の5Kでは、こう言われます。
私の友達や周りの人間は、
「介護だけはムリ。ボケの進んだ年寄りに、イライラする」
「うんちとかオシッコの匂いがムリ」
ネガティブな発言ばかりです。
私は十年近く介護に携わってきました。
確かに、過酷な仕事です。一つの気の緩みが、大事故に繋がります。給料だけを見るなら、まさにハイリスクローリターン。
介護士時代によく飲みに行って、知り合った人に職業を話すと、
「大変ですね」
一言目にはそう言われます。
他の職業では、そんな言葉を開口一番聞きません。
それほど、異常な雰囲気を纏っているのだろうかと思ったときもありました。
私が住む地域では、近年、介護士を志す若者が減少傾向にあり、介護士を養成する専門学校も景気が落ちているようです。
以前、新卒で入社した若者と話していると、
「おじいちゃん子だったんで、家でも介護の真似事みたいなことはしてて、その流れで介護士になりました」
「おばあちゃんの認知が進んでいくのが、怖かって。ろくに会わないまま、他界しちゃって。それが悔しくて、介護の勉強をしている内に、私と同じ思いをする人を減らしたいっていうか、認知症があっても、その人らしく生きていくことはできるんだってことを、もっと知ってもらいたいなって思いました」
共通しているのは、祖父母に思い入れがあり、介護をした経験がある子が入ってきます。
話題のヤングケアラーほどではなくとも、皆、似たような境遇です。
心根の優しい子たちです。
私は、そもそも介護士になるつもりはありませんでした。
夢破れて、都会から戻ってきて、なんとなく人から勧められて始めました。
この十年を振り返ると、ご利用者様と冗談を言って笑ったり、敬老の日や忘年会には、お寿司を発注して、みんな我先に取り合ったり。
カラオケ大会では、自慢の歌を披露してくれたご利用者様もいました。
今でも印象に残っていることがあります。
若い頃から、刀剣を趣味にされているご利用者様がいました。
あまり何事にも関心を持たない方なのですが、いや、当時の私は思慮が浅く、そう見えていただけなのですが。
誰が持ってきたのか、ユニットに刀剣の雑誌があったので、勧めると食い入るように見つめていました。あまりの集中に、おやつも忘れているほどでした。
偶然、時を同じくして、県内で刀剣のイベントが開催されていたので、ユニットリーダーに相談して見に行くことになりました。
施設では見たことのない笑顔や活動性に驚き、あちこち車椅子を漕いで、食い入っていました。
最後には涙を流しながら、「ありがとう」と呂律の回らない口を動かし、お礼を言って下さいました。
達成感に満ち溢れ、まだ介護はやれると思えた出来事でした。
これを読んでいる方の中に、これから介護士を目指そうとされている方はいらっしゃるでしょうか?
ネットで少し調べると、全国的に介護士は増加傾向にあるようです。
これには、驚きました。人手不足が叫ばれる業界に於いて、まさか増加しているとは思いませんでした。
また、国の施策もあり、一昔前よりは、介護士の待遇も良くなっています。
さて、今一度問います。
あなたは、介護をしたいですか?
または、しようと思っていますか?
イエスと答えた、あなた。
もし、あなたが高校生なら、これから未来に期待して夢を持つのも良いでしょう。
転職組のあなた。
今まで経験した社会人としてのノウハウは活かせます。多少、ムリを言われるご利用者様にも、快く対応できるでしょう。
私から言えることは、一つです。
「ようこそ! 地獄へ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます