【2023年12月8日】Web小説『キクナの怨』の第六話

 読み返してみると、少々散文気味になっているでしょうか。

 プロットなど用意せず、思い返したことをそのまま打ち込んでいるので、仕方がないことかもしれませんが、なるべく読み易いように心掛けます。

 どこまで書いたでしょうか。

 ああ、サークルに入ったところでしたね。

 でも、先にネット小説作家としての〝清白キクナ〟の話を書きましょうか。




 忙しい大学生活——といってもほとんどバイト三昧でしたが――の傍ら、私はずっと、暇さえあれば、登録したWeb小説サイトで小説を書いていました。

 ジャンルは説明した通り、ホラーです。いきなり大手出版社が開催している、数多くの人気プロ作家を輩出した賞に応募するよりも、まずはひとつ作品を完結させてみて、自分がどの領域にいるのか見定めてみようと思いました。

 そして、半年ほどかけて一本の長編を完成させました。読まれた方がいるかは分かりませんが、いわゆるホラーミステリーと呼ばれるジャンルのものです。全編が十二万字で、三十話ほどの構成になりました。手前味噌な言い方になりますが、処女作にしては、割合にレベルの高いものを作れたと思いました。

 ところが、評価は散々なものでした。というよりも、そもそも作品自体がほとんど読まれず、評価が付かなかったのです。

 何故だと、納得がいかずに、自分なりに分析してみました。すると、Web小説サイトで活動している人気作家の多くは、Twitterにアカウントを持って自身の作品を宣伝していることが分かりました。

 なるほどと、納得しました。多くの人に読んでもらう為には、何よりも宣伝が必要だったのです。作品の入り口を、多くの人の目に触れさせることが大切だったのです。

 すぐに、私も〝清白キクナ〟のアカウントを開設しました。このWeb小説サイトにもプロフィール欄にリンクを掲示する機能があったので、連携させて運用することにしました。

 SNSを利用するのは初めてのことだったので、どうすればいいか分かりませんでしたが、ひとまずプロフィール欄に、どこそこのWeb小説サイトでこんな小説を書いて活動しています。こんなものが好きです。よろしくお願いします、という旨を書き記して、ぼちぼちと作品へのリンクを貼り付けた宣伝ツイートや、読んだホラー小説や見たホラー映画の感想ツイートを呟き始めました。他のネット小説作家が、そうしているように。

 すると、自然にフォローしフォローされの関係ができあがっていきました。その多くは、同じWeb小説サイトにて活動しているネット小説作家や、YouTubeで動画サイトで怪談を朗読したりして活動しているホラー系YouTuberの人たちでした。

 なんだか、妙に嬉しくなったのを覚えています。頻繁にリプライで会話をしたりするような交流はしませんでしたが、互いの作品の宣伝ツイートをいいねとリツイートで応援し合ったりしていると、まるで同じ夢を追いかける同志ができたかのようでした。

 しばらくすると、清白キクナのアカウントはフォロー数が1000、フォロワー数が800ほどになりました。それだけでなく、作品を読んで評価してくれる――レビューや応援のコメントをしてくれる人も、数人ほど得ることができました。中には、ファンですと言ってくれる人もいて、思わず泣きそうになったのを覚えています。




 しかし、その反面、思わぬ弊害も発生しました。

 Twitterで活動している内に、自分が思っていたよりも本を読んでいなかった人間だということに気が付かされたのです。

 フォローしているアカウントの中には、別にプロの作家でもないのに、今まで私が見たことも聞いたことも無いような小説を大量に読んでいる人たちがたくさんいたのです。まるで、それが当たり前のことだとでもいうように。

 小説だけではありません。漫画や映画、ドラマ、アニメ、音楽、ラジオに至るまで……。ありとあらゆるメディア、コンテンツの蓄積が、私には不足していたのです。

 端的に言えば、単に勉強不足だったのですが、言い訳をすると、私が田舎の出身で貧乏な人間だったからでしょう。田舎には、そもそもありとあらゆるメディアに触れる術が無いのです。町にある本屋やレンタルビデオCDショップはサブスクリプションや電子書籍の台頭によって潰れてしまい、辛うじて残った古本屋はいつの間にかいかがわしいアダルトグッズを取り扱う雑貨ショップに成り果ててしまった為、様々なメディアに触れたくても、触れようがなかったのです。

 それでも、図書館に通ったり、スマホで家族共用の一番料金が安かったサブスクで映画を見たりして、それなりの知識や教養は身に着けているつもりでした。

 しかし、その程度では足りなかったのです。低能な人間に囲まれていたせいで気が付きませんでしたが、私はその辺にいる、人よりちょっとだけ小説や映画に多く触れている人でしかなかったのです。

 Twitterにアカウントを作ったことによって、私は途端に自信を無くしてしまいました。世の中の普通だけど凄い人たちを可視化してしまったことで、自分がどれだけ知識的にも金銭的にも貧しい惨めな人間だったかを、思い知らされてしまったのです。

 しかし、そんなことで私はめげませんでした。

 だから、なんだ。私には、才能があるはずだ。それに、蓄積が足りないというのなら、今から勉強して吸収すればいい。決して、遅くはないはずだ。

 そう考えて、創作活動に励むことにしました。

 今にして思えば、あの時、何もかも諦めておけば良かったのかもしれません。




 また携帯の充電が切れそうなので、続きは明日書きます。

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