【2023年9月22日】2023年9月16日に怪談作家兼オカルト系インフルエンサー輪廻Qの個人サイトに寄せられていたもう一通のメール
――——――――――――――————————————————————————
kijima-yusuke0829@☓☓☓☓☓jp <kijima-yusuke0829@☓☓☓☓☓jp>
2023/9/16 19:14
宛先:rinne9question@☓☓☓☓☓jp
ごめん、途中で間違って送信してしまったみたいだ。先に送っていたメールの続きだと思って、そのまま読んでほしい。
『ユウナの呪』では、結奈は浴槽の中で手首を切って出血多量で死んだという描写がされている。それは、現実でもそうだった。結奈の死因は、手首の切り傷から大量に出血したことによる失血死だ。
でも、その描写には誤りが、いや、誤りではないけど、描き漏れているディテールがある。
君がそれをあえて省いたのか、知らなかったのかは分からないけど、
現実では、結奈は、同時に、舌を嚙み切っているんだ。
警察は、先に舌を嚙んで自殺を図って、死ねなかったから手首を切ったんじゃないかと推測していたけど、恐らく違う。
結奈は、自分の手で戌亥に対する復讐を、、、呪いを実行したんだ。
『ユウナの呪』には、呪いの対象である先輩とは別の先輩が部室に持ち込んでいた古めかしい民俗学についての本が登場するよね。語り部である〝りんね〟は、それに載っていた呪法を使って復讐を遂げるわけだけど、
その本にはモデルがあるはずだ。
当時、部室に置いてあった、装丁がボロボロの黄ばんだ本。
『野州民俗学蒐集録』
あれは、僕がホラー漫画やオカルト雑誌と一緒に、気まぐれに持ち込んでいたものだよ。趣味で収集していた、民俗学に付いての古書。
あれが今、どこにあるのかは分からない。でも、大体の内容を覚えてるから分かる。
『ユウナの呪』で使われていた呪法は、君の創作だ。脚色された、現実ではないフィクションの部分。なぜなら、『野州民俗学蒐集録』には、そんな呪法は載っていなかったから。
本当に載っていたのは、『参猿』という呪法だ。
〝参猿〟と書いて〝まいりましら〟と読むこの呪法は、色々と複雑で全容を説明するのは難しい。だから、単刀直入に言う。
結奈は『参猿』という三通りのやり方がある呪法の内の、『口食み』という方法を自己流でやった可能性がある。
これもいちいち説明していたらキリが無いから、要点だけ言う。
『口食み』(くつばみ)は、自分の血で赤く染めた水で全身を清めて、呪いたい人間の名前を交えた文言を三度唱えた後、自分の舌を噛み千切って命を絶つことで成し遂げられるんだ。
結奈が先にどちらを、、、舌を噛み切ったのか、それとも手首を切ったのかは分からない。考え過ぎなだけかもしれないし、厳密に言えば『口食み』には正式なやり方があって、実行するにはもっと細かく手順を踏まないといけない。
つまり、もし結奈が『口食み』を実行したつもりなのならば、それは疎かなやり方に終わってしまっているわけだ。
でも、当の戌亥は、奇妙な死を遂げていた。四年もの期間が空いているとはいえ、とても普通とは思えない死に方をしていた。
もし、それが、結奈による、正当な方法ではなく、捻じれたやり方で行われた『口食み』の呪いによるものだったとしたら、、、、、
これが、僕が結奈が死んで以降、ホラーから離れていた理由だ。
もちろん、確証はない。これは僕の憶測に過ぎない。
でも、もし結奈が『口食み』を実行していたとするのなら、結奈が死んだのは僕のせいだ。
僕が部室に『野州民俗学蒐集録』を持ち込んでいなければ、
それを結奈が読まなければ、
自らの命と引き換えに呪いをかける呪法の存在を知っていなければ、、、
結奈は死ななかったかもしれないんだから。
そもそも、僕がホラー好きでなかったのなら、未練がましくサークルに顔なんか出していなければ、結奈は、、、、、
今更、こんな所で懺悔したって仕方がないかもしれない。君も、一体何を読まされているのか分からなくなってきたかもしれないね、ごめん申し訳ない本当にすまない。自分でも何がしたいのかよく分かってないんだ。酷い散文になってると思う。
でも、どうか最後まで読んでくれ、頼む、
僕は君が書いた『ユウナの呪』を読んだ時に、ひとつの最悪な考えが頭をよぎった。君と結奈との関係を思えば、決してよぎるべきではない最悪の考えが。
さっき、『口食み』という呪法には、もっと正式な手順があると説明したと思う。
その中のひとつに、
まったく同じ作りをしている二体の人形を用意し、
ひとつを自分が、
もうひとつを呪いの対象にする人間に持たせていれば、
呪いの効力が格段に増す、というものがあるんだ。
まったく同じ作りをしている二体の人形、、、
僕は、当時のことを何から何まで覚えているわけじゃない。だから、
『ユウナの呪』で描かれていた、君と結奈がお揃いでチャッキー人形のキーホルダーを持っていたという描写が現実なのかフィクションなのかは分からなかった。
それを確認する為に、携帯の連絡先を漁りに漁って、当時の『猫又俱楽部』のメンバーに連絡を取ろうと試みた。でも、LINEグループはとうの昔に消滅していたし、辛うじて連絡先に残っていた人たちにメッセージを送っても、鬱陶しがられているのか、それともアカウント自体が機能していないのか、既読すら付かなかった。
ただ、唯一、菊名さんにだけ連絡が取れた。
覚えてるだろう。君たちと同い年で、暇さえあれば部室でずっとホラー小説を読んでいた、あの無口な子だ。
それで、電話で当時のことを色々と訊いてみたんだけど、、、
その、
、、
僕が知らなかったことを、
菊名さんは色々と知っていて、
その、
君は、
まさかとは思うけど、
君は、、、、、
信じてくれなくたって構わない、これは僕の仮説にすぎないし考えすぎなだけかもしれないし、ただ、最後まで読んだのならすぐに連絡をください、それかそういうツテがあるのならすぐにお祓いに行ってください。
もしかしたら君に呪いが『口食み』は絶対に避けられない呪いだから、早く対処しないとまずいことになるかもしれない、何が
真実かは分からないこのメールを送る
ことも悩みになやんだ結果で、でもこれ以上僕のせいで人が死ぬのも嫌で、でも
このメールを打っている時もなんどもシステムエラーが起きて落ちて それに
さっきから肩がやkに
重くて指がよっく動かなくて妨害されているのかもしれない震えっが
とまらないこれっもくつばみの呪いのはんんちゅうなんおかもしれない、いや結奈が
まさっかそんなことありええないと思うけど
君にも
おなじことっがおおこtt起こっていたらまずい早く、この
メールhがぶじに届くこっとをいのrrrrrrrrrrrrrrrrrr
――——――――――――――————————————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます