UFO日本上陸

UFO日本上陸

　国立競技場の上空で突如閃光がさく裂した。グラウンドを照らす昼白色の照明のその上で、何色もの光が夜闇を切り裂くように点滅している。

　サッカー日本代表対フランス代表の試合は惜しくも1-2で日本が惜敗したものの、強豪相手に互角の戦いを繰り広げた熱戦を名残惜しむようにスタンドの半分ほど残っていた観客は、騒然と上空を見つめた。やがて多くの人が思い出したようにスマートフォンのカメラを向けた。

　まばゆい光に目を凝らすと、上空に巨大な円盤が浮遊していた。距離感も大きさもつかめないが、とぐろを巻いた大蛇のような曲線を持った、メタリックな円盤だった。

　観客が息をのんで見つめる中、円盤は水平を保ったままゆっくりと降下した。客席を覆う屋根の、グラウンド上空の空いた位置で停止すると、円盤底の中央部分からレースのカーテンのような円形の光線が地上に向かって放たれた。その光線に舞うように円盤の中から何かが降りてきた。

　グラウンドに降り立ったのは、人間に似た肢体を有する、全身銀色の、大きな黒い眼を持つ生命体だった。

　その生命体の顔に、人間でいう口は見当たらなかったが、金属音のような声を競技場全体に響かせた。

「我々は、宇宙人ではありません」

　無機質な日本語でそれだけ話すと今度は光線の中を浮上し、円盤もろともあっという間に飛び去って行った。

　上空は闇が戻り、競技場には大きな謎が残された。