第1話.Wi-Fi産まれブルーライト育ちの魔王さま Aパート
所変わって管理番号xxxxxxx。
所謂現代の地球のような世界だ。
少しだけ違うところがあるとすれば、
幻夢は、実体のない怪物だ。
不定期に現れ、少しの間暴れたら消える。
現代兵器はほぼ効かないが、達人の扱う武術であれば多少は効果があるとされている。
「はうわぁぁぁぁぁ、センパイ方の新衣装控えめに言って最高がすぎるぅぅぅぅ」
普段はVtuberの
希望は、防音室というものがよく分からなかった。なので、手っ取り早くお隣に人がいない土地を拠点として構えていた。
築50年の一軒家。その2階を配信部屋として利用している。
広々と使える和室は開放感があるものの、配信機材がどこか異質感を放っている。
PCは虹色の光を放つ、ゲーミング風PCで大き目のディスプレイを二枚、小さ目なディスプレイを一枚使っていた。
小さ目なディスプレイには、作業途中で放置されたであろうサムネの編集画面が虚しく映っていた。
巫女服を部屋着として着用している希望は、畳の上でゴロゴロと悶えている。元々推していた先輩方の新衣装だから当然の話だ。
スクショタイムになり、音声が途切れた所で違和感に気づいた。
外が騒がしいのだ。
人がほぼこないことを理由に選んだというのに、何があったのだろうと窓の外を見ると、近所の子供たちがなにか抱えてやってきていた。
「せんせーい! はいしんしてないなら降りてきてー」
その中の一人が大声で話しかけてくる。
希望は、本名バレ対策として近所の子には先生と呼ばせているのだ。
アーカイブの再生を止め、子供たちのもとへ向かう。
「はい、こんにちは」
「こんにちは、先生。これ拾ったの」
「また狸? ……おやぁ違うな」
子供たちが拾ったのは、アスタロトであった。
「やぁ」
「喋った!? やるやん。 こいつはどこで拾ったのかな?」
「急に降ってきた」
「じゃ、落とした人が困ってるかもだし、一旦事件現場いこうか」
「はーい」
希望は子供たちをつれ、アスタロトを拾った現場にやってきた。
そこは事件性のある焦げ方をしていた。
「ここだよ、ここ」
「ふぅん……」
希望は、危険だと思いながらも好奇心に抗えず、焦げている場所を調べた。
砂がガラス化しているようで、異質な雰囲気があったのだ。
しばらく考えていると、辺りに霧というかモヤが漂ってきた。幻夢である。
「早く逃げて」
「先生は?」
「少し時間稼ぐよ」
希望は念の為持ってきていた木刀を構える。
震えるほど怖いのだが、流石に自分が逃げて子供を逃さないと目覚めが悪いと思い、一発殴ろうと判断した。
「わかった。先生も早く逃げてね」
子どもたちの判断は早く、我先に逃げ出した。
これでいいと希望は思った。無駄なあがきをするところを見せる必要はないのだ。せめて一人でも多く逃げられれば上等だろう。
立ち向かった時点で、自身が生き残れる可能性はほとんど考慮していない。
そうこうしている内に、幻夢は実体を現していた。
二足歩行のなにかとしか言えない形状だ。上半身が誇大化し鋭い爪を持っているように視えていた。
「チェストぉぉぉ!」
気合だけの攻撃。
綺麗な一撃であった。
が、幻夢にあたった途端、木刀は砕けた。
そこからはスローモーションに感じた。走馬灯もぐるぐる巡る。
希望が認識できた時点で、既に心臓を貫かれていた。
興味のなさそうな幻夢をしりめに、希望は何もできずに死んだのだ。
「やれやれ……スカウト前に死なれると困るな」
希望の前に、アスタロトが単身で現れた。
「君は、魔王になるための器だ。しっかりしてくれよ」
そう言うとアスタロトが光ったように思えた。
「君は運がいい。見捨ててもいいけどSSRだからね。しかも立ち向かう心もある。何処までも都合がいい」
アスタロトが希望に触れると、光が希望を包む。
ぼんやりとした意識の希望は、体が芯から熱くなっているのを感じた。
「拒否反応はなし……さあ、乱れ咲いて番狂わせさせてくれ、俺のガチャ運!」
アスタロトから鍵のようなものが現れ、希望の胸に突き刺さる。
眩い光と共に、貫かれた痕を埋める。
「よし、さすが適応率70%の身体だね。まだ意識はないだろうし、今回はこちらから無理矢理起動するとしよう」
アスタロトが、希望の心臓辺りに触れ、黒い光を流し込む。
『Code Of Kira』
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