「理不尽な幸せ」

お題:それは怒り




理不尽な幸せ



最高の気分だ。

目が覚めればすべてが手に入っていた。


どういうわけだかわからんが、そうなのだから仕方ない。

朝目が覚めると私は豪奢な天蓋のベッドの上にいた。部屋は豪華な調度品で飾られ、階下に降りると執事やメイドが朝食の用意にいそしんでいる光景が目に入った。

ホテルのレストランのようなきらびやかさの食卓に、私は目を見張った。

「おはようございます、お嬢様。朝食ができて御座いますので、お席におつきくださいませ」


「な、なに?」

私は3畳一間のアパートでさもしい独り暮らしをしていたはずなんだけどな、何で起きたらこんなことになっているんだ。

戸惑いながらも出されたふわふわオムレツに口をつけると、これまた美味かった。豪華な食事をあっというまに平らげた私は、メイドに身なりを整えられ、学校へと向かう。もちろんリムジン送迎で。


到着したと声をかけられて下りてみれば、漫画でしか見たことのない「超名門学校」が目の前にあった。

おかしいな。私は地元のぼろい公立の高校に通っていたはずなんだけどな、当たり前の毎日をすごしていたはずなんだけどな……。

「おはよ、今日もかわいいな」

「ん、なに?」


目の前に超絶イケメンが現れ、私の手をとって校舎へと歩き出した。話を聞けば、私の恋人であるという。おかしい。私は彼氏いない歴=年齢だったはずなのに。



――朝目が覚めたら、名門高校に通う金持ちのお嬢さまになっていて、イケメンの彼氏がいた。


最高だ、戸惑いはしても、なにも不満はない。もうお金に悩まなくても済むし、衣食住が超安定しているし、そして念願の彼氏まで手に入れた。なにも嫌じゃない。どん底の人生だったし、いいこと何もなかったし、元の生活に未練なんてなにもない。理由はわからないけど、私はこれからずっとこの生活が続くんだ。

ほんと、最高。イケメンの隣で、ついため息が出るほど。





……ははは。私は今、怒っているのだろうな。

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