「完璧で不完全」

お題:出来損ないの僕



完璧で不完全


かしゃん、かしゃん、と音がする。いつものことだけど、慣れることはない。

いつものように夕方に都会の往来を歩いていると、今日はいつもと見慣れぬ親子連れがいた。どうやら少年が、塾のテストの点数が悪かったことを親に叱られているようだ。ああ、冬の、受験の季節か……。なにも外で叱らなくてもいいのに、少年を気の毒に思い眺めていると、彼は両親にこういった。

「お父さんお母さん、出来損ないでごめんなさい。もっと勉強頑張るから、僕を見捨てないで……」

そういう少年を、両親は抱擁し、言い過ぎたと詫びて微笑みあった。

お、仲直りかな?泣きじゃくる少年をみて、僕は「いいな」と思った。僕だって、そんな風に泣いてみたかったな。そして、こんなふうに許してもらいたかった。


……誰に?――そうだった。アンドロイドの自分には、父も母もいないのであった。

かしゃん、かしゃんと音がした。それは僕の人口心臓をポンプで動かす内部機械の音であったり、単純に僕が歩く際に動かす人工足の、関節の金属が合わさる音でもあった。朽ちることのない強靭な肉体、疲れの知らない肉体。

この体はなんでもできるけれども、何にもできない。望むことが何一つできない。涙を流すことも、何も。なにもかも、なにもかも出来損ないの僕。「出来損ない」?いや、僕はきっと、生まれてさえいないのかもしれない。どうやったって、アンドロイドは人間になれやしないのだから。

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