83 カフェのオープン

「今日はオープンの日だよ。準備はできたか?」

店長の声に、私は頷いた。新しいカフェのオープンに向けて、一週間かけて店内を飾り付けた。メニューも工夫した。自信があった。

「それじゃあ、いよいよ開店だ。お客さんを待とう」

店長は笑顔でドアに向かった。私もついて行った。ドアの前には、早くも行列ができていた。人気が出そうだと嬉しくなった。

「ようこそ、カフェ・ミラージュへ!」

店長はドアを開けて、お客さんを招き入れた。私も笑顔で迎えた。最初のお客さんは、若いカップルだった。彼らはメニューを見て、注文した。

「二人とも、カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーをください」

「はい、かしこまりました。お待ちください」

私はカウンターに戻って、コーヒーを淹れた。カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーは、私のオリジナルレシピだった。秘密の香料を加えて、不思議な味と香りを作った。お客さんに喜んでもらえるといいなと思った。

「どうぞ、お召し上がりください」

私はコーヒーを運んで、カップルに渡した。彼らはありがとうと言って、コーヒーを飲んだ。私は彼らの反応を見た。

「うわ、すごい!これは何だろう?」

「本当だ、不思議な味だけど、おいしいね」

「香りもいいし、なんだか気分がいい」

「ねえ、このカフェ、ミラージュっていうのは、幻の意味なの?」

「そうかもね。でも、いい幻だよ」

彼らは笑って、コーヒーを飲み続けた。私は嬉しくなった。私のコーヒーが気に入ってくれたようだった。他のお客さんも同じように感じてくれるといいなと思った。

「ありがとう、ごちそうさまでした」

カップルはコーヒーを飲み終えて、席を立った。私はレジに行って、会計をした。彼らはお金を払って、店を出た。


私はドアの外に目をやった。

そこには、誰もいなかった。

行列は消えていた。道には、車も人もなかった。静寂が広がっていた。

「えっ、どういうこと?」

私は驚いて、店長に聞いた。店長は笑って、私に言った。

「ああ、それはね、カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーの効果だよ。飲むと、現実から離れて、夢の世界に行けるんだ。だから、あのカップルも、今は夢の中にいるんだよ」

「ええっ!? それって、本当ですか!?」

私は信じられないと言った。店長は頷いて、私に言った。

「本当だよ。だって、このカフェ自体が、夢の中にあるんだから」

「はぁ!?」

私は呆然とした。店長は笑って、私に言った。

「君も、カフェ・ミラージュのスペシャルコーヒーを飲んだんだよ。だから、ここに来たんだよ。でも、心配しなくていい。夢はいつか覚めるから。それまで、楽しんでいろよ」

「でも、でも……」

私は言葉に詰まった。店長は私の肩を叩いて、言った。

「さあ、次のお客さんが来るよ。準備はできたか?」

私は頷いた。新しいカフェのオープンに向けて、一週間かけて店内を飾り付けた。メニューも工夫した。自信があった。

「それじゃあ、いよいよ開店だ。お客さんを待とう」

店長は笑顔でドアに向かった。私もついて行った。ドアの前には、早くも行列ができていた。人気が出そうだと嬉しくなった。

「ようこそ、カフェ・ミラージュへ!」


夢の中でもカフェを飲んだ私は、永遠に繰り返す・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る