80 コンクリートブロックの夢

ある日、コンクリートブロックが目を覚ました。

そう、目を。彼は自分が夢を見ていることに気づいた。夢の中で彼は人間だった。感情を持ち、愛することができ、そして何よりも、自由に動き回ることができた。


「こんなに美しい世界があったなんて!」

彼は夢の中で叫んだ。

彼はビルの一部であることに誇りを持っていたが、夢の中の人間の生活は魅力的だった。彼は夢の中で恋をし、家族を持ち、毎日を笑顔で過ごした。


しかし、現実は違った。彼はただのコンクリートブロック。感情もなければ、動くこともできない。

「私はただのブロック……ただの無感情なブロック……」

彼はため息をついた。


ある朝、彼は目覚めた。

夢から覚めた彼は、自分がただのコンクリートブロックであることを思い出した。しかし、何かが違った。彼の表面には、微かなひびが入っていた。そしてそのひびから、小さな芽が顔を出していた。


「これは……私の中から?」

コンクリートブロックは驚いた。彼は生きていると感じた。彼の中から新しい生命が生まれている。彼はもうただのブロックではなかった。彼は生命を育む土壌だった。


「私は新しい命を育てることができる……私はもうただのコンクリートではない!」

彼は喜びに満ちた声で呟いた。


日々が過ぎ、芽は花になり、花は実をつけた。コンクリートブロックは、自分が夢見た人間のように、愛を育むことができた。

「私の夢は、現実になったんだ……」

彼は優しく微笑んだ。


彼はもう夢を見る必要はなかった。なぜなら、彼の現実は夢以上に美しいものだったから。


ただし、ある人が、コンクリートブロックの一部分が満面の笑みを浮かべているのを見て、たいそう驚いたという……。

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