74 大切なライフライン

町の中心にある大きな時計台の下で、人々は集まっていた。


「ライフラインが復活する」という噂が広まり、誰もがその瞬間を待ちわびていた。

災害で、水、電気、インターネット、すべてが一斉に止まってから一週間。生活は一変し、人々は不便さを痛感していた。


時計台の下では、市長が壇上に立ち、「今日、我々のライフラインが戻る!」と宣言した。

歓声が上がり、人々の顔には期待が溢れていた。


しかし、時計の針が約束の時間を指した瞬間、何も起こらなかった。水は流れず、電気はつかず、インターネットも繋がらない。市長は困惑し、人々は失望した。


その時、一人の老人が前に出てきて言った。

「私たちの本当のライフラインは、これらの便利さではない。人と人との繋がりだ。今週、私たちは互いに助け合い、共に生きる力を見つけた。それが真のライフラインだ。」


人々は老人の言葉に感動し、再び絆を深めることを誓った。

しかしその夜、ライフラインは本当に復活した。水が流れ、電気が灯り、インターネットが繋がった。


翌朝、人々は再び各自のスマートフォンやテレビに顔を埋め、老人の言葉は忘れ去られた。絆を深めるという誓いも、便利さの前には脆くも崩れ去ったのだ。

こうして、同様のことは繰り返される・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る