56 沈黙の時間

彼はいつも沈黙の時間を楽しみにしていた。

午後三時から四時までの一時間、彼は自分の部屋にこもり、音楽を聴いたり、本を読んだり、夢を見たりした。彼はその時間にだけ自由になれると感じていた。

両親は仕事に出かけていて、兄弟は学校にいて、誰も彼に干渉しなかった。沈黙の時間を守るために、電話も切って、ドアに鍵もかけた。


ある日、彼は沈黙の時間に本を読んでいた。本の中の主人公は冒険に出かけて、色々な人や物に出会って、楽しそうにしていた。自分もそんな風になりたいと思った。

彼は本を閉じて、窓の外を見た。空は青くて、鳥が飛んでいた。部屋から出て、外に行こうと思った。彼はドアの鍵を開けて、廊下に出た。すると驚いた。廊下には誰もいなかった。彼は階段を降りて、リビングに行った。リビングにも誰もいなかった。テレビをつけたが、画面には何も映らなかった。家の中を探したが、誰もいなかった。

彼は外に出ようとしたが、ドアには鍵がかかっていた。どうしても鍵が開かない。

彼はパニックになった。叫んでも、全ては沈黙していた。


彼は沈黙の時間に囚われてしまったのだった。

沈黙の時間を満喫できるというのに、どうしてしまったのだろう。

実は沈黙の時間に叫ぶ喜び(?)にも目覚めたのだった。

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