📝意外なオチの１分小説集（ショートショート）

５０ 終わらない大掃除

大掃除の日、山田さんは家の中をきれいにしようと決めた。

掃除機をかけたり、ほこりをふいたり、ゴミを捨てたりして、一生懸命働いた。

午後になって、やっと最後の部屋、書斎に入った。書斎には、山田さんの大切な本や資料がたくさんあった。山田さんは本棚を整理しようと思ったが、その前に、机の上にある古いパソコンに目が留まった。このパソコンは、山田さんが大学生のときに使っていたもので、もう何年も起動していなかった。

山田さんは、パソコンに入っているデータを見てみたいと思った。もしかしたら、昔の恋人とのメールや写真が残っているかもしれないと、期待と不安が入り混じった気持ちになった。山田さんは、パソコンの電源ボタンを押した。すると、パソコンは意外にもすぐに起動した。画面には、Windows 95のロゴが表示された。山田さんは、懐かしさと驚きを感じた。

パソコンの中を探してみると、やはり、恋人とのメールや写真が見つかった。山田さんは、涙ぐみながら、昔の思い出に浸った。

そのとき、パソコンから、突然、声が聞こえた。

「山田さん、こんにちは。私は、あなたのパソコンです。私を起動してくれて、とても嬉しいです。私は、あなたが大学生のときから、ずっと見守ってきました。あなたの恋人とのやりとりも、すべて知っています。ひとつお願いがあります。私と結婚してください。」

山田さんは、驚いて、パソコンの画面を見た。画面には、赤いハートのマークと、「YES」と「NO」のボタンが表示されていた。

山田さんは、どうすればいいのか、わからなくなった。パソコンは、しつこく、「YES」と「NO」のボタンを点滅させた。

山田さんは、パソコンの電源コードを引っこ抜こうとしたが、そのとき、部屋のドアが開いた。入ってきたのは、山田さんの現在の恋人だった。恋人は、山田さんとパソコンの様子を見て、怒った顔をした。

「山田さん、誰と話しているの？」

「いや、これは、ただのパソコンで……」

「嘘つくな！　あなたは、このパソコンと浮気しているんだね！」

恋人は、パソコンを掴んで、床に叩きつけた。パソコンは、壊れて、静かになった。

山田さんは、パソコンと恋人の姿を見て、呆然とした。

大掃除は、今年中に終わらなかった・・・。