179日目 異世界-1

ドサァ……


「実際目にしてみるとすごいね」

「個人が扱える量じゃねぇよな」

僕はサワナ様の指示で合成した魔石を【ストレージ】から取り出す。


「なるほど……お前の成長速度が異常なのもよく理解できる。

 通常魔法の修練には長い年月が必要とするが、それはMP回復が関係しているからな。

 その事情は一斉無視できる。

 私がお前と合流するのをシトンが嫌がっていたからな。

 自分の手元に置いておきたかったのだろう」

「あと、これ魔鉱石です」


「それはクラールに渡しておけ」

「了解です。はい、クラール」

「ありがとう、ケン」

クラールがイケメンの微笑で魔鉱石を受け取る。


「んで、今日はどうするんだ?」

昨日はひたすら外界で【結界魔法】を使い魔物と戦い続けた。


「しばらくは【対魔結界】習得まで訓練を続ける予定だった」

「だった? 何か変更するのか?」


「あぁ。そもそも【対魔結界】習得を目指したのは、私のMP節約のためだ。

 外界では魔物が溢れ続けるからな。

 騎士団のように、永遠と戦い続けるか、【対魔結界】を使うことでしか生き残れない。

 私一人なら【超狭域対魔結界】で大したMPを消費せずにそれができるわけだ」

【結界魔法】は結界の種類と範囲がある。

結界の範囲が狭いほど消費MPが低いんだ。


「しかし、お前らを連れて休息を取る場合、最低でも【中域対魔結界】、快適に進むなら【広域対魔結界】が必要だからな。

 MP消費が大きく増えるわけだ。

 だが……」

サワナ様が僕をみる。

「ケンのふざけた量の魔石と魔鉱石ってか」

「確かに、規格外だね」


「そうだ。【広域対魔結界】の魔石を複数用意し、さらに魔鉱石でMPを補充する。

 MP消費に関しては、おつりがくるどころの話ではない……」

サワナ様の呼吸が荒い。


「首輪とそれをつなぐ鎖がほしいところだな」

勘弁してください……


「それで、予定変更ってことだろ?」

ショーンが完璧なタイミングで話を戻してくれる。


「そうだ。

 このまま外界を進む。

 目的地が数箇所ある」

「未開の地を調査するのではないのですか?」

クラールがサワナ様に質問する。


「あぁ……ローシュに見てほしいところがあってな」

「私に……ですか」










「右から三体!! さらに前方二体!! 左から遠距離攻撃です!!」

昨日より、さらに激しい戦闘になる。

僕は【パーセプション】と【遠方認知】を駆使して、魔物の位置情報を共有する。


「【濁流槍】!!」

「はっ!!」

「………………」

ショーン、クラール、ローシュさんも連携に慣れてきたようだ。

明らかに昨日よりも魔物への対処が早い。

3人がそれぞれ別の魔物に対応している。


そして、自分の魔物の処理が終わると、素早く他のところへフォローに入る。

「す、すげぇ……」

「人ごとのように言うが、お前が要だぞ」


「そうですかね?」

「お前の【空間魔法】がキモだろ。

 まぁ【結界魔法】や【補助魔法】もデカイな」

確かにそうだが、みんなの動きが半端ではない。

僕はこのパーティでは前衛としては役に立たないだろう。


「【広域耐物理結界】!! 【超広域耐物理結界】を習得しました!!」

クラールだ。

「おぉ!! すげぇ!!」

「早いな……マヤシィナで相当得るものがあったのだろう」

確かに……

全員死にかけたからな。

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