178日目 異世界-1

目覚めると日本ではない……

小さな部屋……ベットと窓がある簡素な木造の部屋だ。

ここはどこだ?


【パーセプション】を使用すると、二階建ての建物一階部分に自分がいることがわかる。


異世界……だよな。

今回は4日間しか間が空いていない。

【狂戦士】になることのハードルが下がってしまったこと、そして、4日間しか空いていないということは、その反動も軽減されているということだろうか。


もしそうなら、状況はよくない。

【狂戦士】へのスイッチが簡単に切り替わるとしたら、非常に危険だ……


「あぁ!! 僕の服がぁ!!」

ん?

何やら聞き覚えのある声だ。

「服ぐらいでガタガタと騒ぐな。

 汚れるのが嫌ならさっさとレベルを上げろ」


僕は扉を開けて建物から出る。


「ケン!!」

「クラール!!」

クラールだ。

「目覚めたか」

一緒にいるのはサワナ様、声はクラールとサワナ様だったのか。


「お?」

「狭間様」

ショーンとローシュさんもいる。


なんだなんだ?

どういう状況?










「その節は申し訳ございませんでした……」

僕はローシュさんに頭を下げる。

【狂戦士】になってしまったことで、ローシュさんを殺しかけてしまった。

アンティさんが止めに入ってくれなければ……と考えると恐ろしい。


「いえ、事情は存じております」

相変わらず感情が読めない。

表情がピクリとも動かないのだ。

本当に怒ってないおだろうか。


「アンティに【狂戦士】の特性について聞いたのです。

 凄まじい殺戮衝動があるとか」

「はい……【狂戦士】は爆発的なステータス上昇の代償として、MP、SPが凄まじい勢いで減っていきます。

 さらにそれらが枯渇するとHPが減り始め、頭が割れるように痛むんです。

 そして、周りの生物全てを殺したくなります。特に強いものを……」


「なるほど……」

「しかし、アンティさんは【狂戦士】を知っていたみたいですね」


「まぁアンティ殿のことだ。

 これまでの拷問で【狂戦士】を目覚めさせてしまったことがあるのだろうな」

サワナ様だ。

「そういえば、なぜサワナ様やみんながここに?

 というより、ここはどこですか?」


「外界だ。私の拠点でもある」

「へぇー……」

僕は建物をキョロキョロと見回す。

さすがはサワナ様だ。

外界に拠点を持っているとは。


「【結界魔法】ですかね?」

先ほど【パーセプション】を使ったときに違和感があった。

「そうだ。外界で生活するなら【結界魔法】は必須だからな。

 この拠点には常に【結界魔法】が使われている」


「それで、なぜここに?」

「お前はもう中央東には戻れんからな。

 私が面倒をみてやることになった」


「え……」

そうか。

あれだけのことを騎士団にしてしまったのだかからな……


「あ、あの、騎士団のみなさんは無事だったんですか?」

「はい。あのとき、アンティが止めに入ってくれましたので、トロゲン団長を含め、全員が無事に中央東に帰還しています」


「よかった……」

「いや、状況はよくない」

サワナ様だ。


「お前が狂った危険人物だということが、騎士団共通の認識になったわけだ」

「はい……」

「サワナ様、言い過ぎだろ。ケンだってそうなることを望んでたわけじゃねぇんだし」


サワナ様は僕をフォローしてくれたショーンを無視し、ローシュさんのほうへ向き直る。

「ローシュ、お前はアンティがきてなければどうなっていたと思う?」

「………………」


ローシュさんは問いには答えない。

「騎士団全滅、皆殺しだろ?」

「はい…………」

「マ、マジで……?」

「………………」

確かに、あのときアンティさんが止めに入ってくれなければ……


「ということで狭間、お前は前衛禁止だ。

 しばらく【回復魔法】と【補助魔法】に徹しろ」

「はい……」

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