178日目 異世界-1
目覚めると日本ではない……
小さな部屋……ベットと窓がある簡素な木造の部屋だ。
ここはどこだ?
【パーセプション】を使用すると、二階建ての建物一階部分に自分がいることがわかる。
異世界……だよな。
今回は4日間しか間が空いていない。
【狂戦士】になることのハードルが下がってしまったこと、そして、4日間しか空いていないということは、その反動も軽減されているということだろうか。
もしそうなら、状況はよくない。
【狂戦士】へのスイッチが簡単に切り替わるとしたら、非常に危険だ……
「あぁ!! 僕の服がぁ!!」
ん?
何やら聞き覚えのある声だ。
「服ぐらいでガタガタと騒ぐな。
汚れるのが嫌ならさっさとレベルを上げろ」
僕は扉を開けて建物から出る。
「ケン!!」
「クラール!!」
クラールだ。
「目覚めたか」
一緒にいるのはサワナ様、声はクラールとサワナ様だったのか。
「お?」
「狭間様」
ショーンとローシュさんもいる。
なんだなんだ?
どういう状況?
◇
「その節は申し訳ございませんでした……」
僕はローシュさんに頭を下げる。
【狂戦士】になってしまったことで、ローシュさんを殺しかけてしまった。
アンティさんが止めに入ってくれなければ……と考えると恐ろしい。
「いえ、事情は存じております」
相変わらず感情が読めない。
表情がピクリとも動かないのだ。
本当に怒ってないおだろうか。
「アンティに【狂戦士】の特性について聞いたのです。
凄まじい殺戮衝動があるとか」
「はい……【狂戦士】は爆発的なステータス上昇の代償として、MP、SPが凄まじい勢いで減っていきます。
さらにそれらが枯渇するとHPが減り始め、頭が割れるように痛むんです。
そして、周りの生物全てを殺したくなります。特に強いものを……」
「なるほど……」
「しかし、アンティさんは【狂戦士】を知っていたみたいですね」
「まぁアンティ殿のことだ。
これまでの拷問で【狂戦士】を目覚めさせてしまったことがあるのだろうな」
サワナ様だ。
「そういえば、なぜサワナ様やみんながここに?
というより、ここはどこですか?」
「外界だ。私の拠点でもある」
「へぇー……」
僕は建物をキョロキョロと見回す。
さすがはサワナ様だ。
外界に拠点を持っているとは。
「【結界魔法】ですかね?」
先ほど【パーセプション】を使ったときに違和感があった。
「そうだ。外界で生活するなら【結界魔法】は必須だからな。
この拠点には常に【結界魔法】が使われている」
「それで、なぜここに?」
「お前はもう中央東には戻れんからな。
私が面倒をみてやることになった」
「え……」
そうか。
あれだけのことを騎士団にしてしまったのだかからな……
「あ、あの、騎士団のみなさんは無事だったんですか?」
「はい。あのとき、アンティが止めに入ってくれましたので、トロゲン団長を含め、全員が無事に中央東に帰還しています」
「よかった……」
「いや、状況はよくない」
サワナ様だ。
「お前が狂った危険人物だということが、騎士団共通の認識になったわけだ」
「はい……」
「サワナ様、言い過ぎだろ。ケンだってそうなることを望んでたわけじゃねぇんだし」
サワナ様は僕をフォローしてくれたショーンを無視し、ローシュさんのほうへ向き直る。
「ローシュ、お前はアンティがきてなければどうなっていたと思う?」
「………………」
ローシュさんは問いには答えない。
「騎士団全滅、皆殺しだろ?」
「はい…………」
「マ、マジで……?」
「………………」
確かに、あのときアンティさんが止めに入ってくれなければ……
「ということで狭間、お前は前衛禁止だ。
しばらく【回復魔法】と【補助魔法】に徹しろ」
「はい……」
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