174日目 異世界-1

棺で目覚める。

本日は戦闘中ではないようだ。

棺の蓋を開けると、朽ち果てた建物とその周囲には騎士団の方々がいる。


「おはようございます」

「おはようございます!!」


騎士団の方々は比較的落ち着いている。

「あれから魔物は出現していないんですか?」

「はい。やはりあのような集団を殲滅すると、しばらく周囲は安定するようです」


「なるほど。あ、水いります?」

「ありがとうございます」


僕は【水魔法】で生活に必要な水を騎士団の方々に渡していく。


「おぉ、これはこれは、狭間様。朝から水の補給をありがとうございます」

「トロゲンさん。おはようございます」


「おはようございます」

「遺跡の調査はどうですか?」


「はい。特に変わった形跡や魔道具は出土していないようですな。

 ご覧の通り、かなり時間が経っているでしょうし、魔物もうようよといたところですからな」

「そうですか」


「ですので、少しの間ここで休憩をし、それから物資の状況で帰還するかさらに進むか決めていきます」

「了解です。あ、そうだ!」

僕は【魔力庫】から日本で育てた野菜を出す。


「これは!?」

「はい。野菜を栽培することに成功しまして」


「な、なんと!!

 【ストレージ】や【魔力庫】で栽培が可能なのですか!?」

「い、いえ。そうではないんです。まぁ特殊な方法と言いますか……」


「いや!! 説明は結構ですぞ!!

 帰還しましたら、シトン様に聞いてみます。

 許可が降りればお話できるのでしょう」

「はい、そうしてもらえると助かります」


「それよりも、今はそれを皆でいただきましょう!!」


【聖騎士】の方々が、手際良く調理をする。

魔道具を使って調理器具を使用すれば、現代日本のキッチンに近いレベルまで簡単にできる。

僕は野菜の他に、水を提供する。


「しかし、狭間様のおかげで外界にもかかわらず、快適に進むことができていますな。

 これならば、補給に戻る必要はなさそうですぞ」

「食料なんかはまだ結構あるんですか?」


「もちろんです。

 昨日大量に魔物を倒したではありませんか」

「そうですね」

そうか。

魔物との戦いは食糧の調達に直結するんだ。


「あの、僕もこの辺りを見てまわってもいいですか?」

「そうですな。

 騎士団が一通り見て安全を確認していますので、問題ございません」

トロゲンさんはそういうと、あたりをキョロキョロと見渡す。


「ローシュ!!」

呼び止められたローシュさんが早足で近づいてくる。

「はい」


「狭間様がこの辺りを見てくださるようだ。

 護衛を頼む」

「はい。承知しました」


「ありがとうございます」

僕はトロゲンさんにお礼をいうと、ローシュさんと周囲の探索をする。


「結構な規模の遺跡ですね」

「そうですね。今まで発見された遺跡中でも大きい方だと思います」

朽ち果てた建物には、植物が巻きついており、建てられたのはかなり前だと推測できる。

そして、遺跡は視界の先まで続いており、遺跡の端が見えないのだ。


「狭間様は【空間魔法】が使用できますので、もしかしたら、我々が発見できないものを発見できるかもしれません」

「そうですね……確かに」

僕は【遠方認知】で周囲を確認する。


建物は直径1kmくらいの範囲に点在しているな。

「にしても、ここまで大きな遺跡なのに魔道具の一つも見つからないんですかね」

「はい。外界は強力な魔物がおり、かつ野生化していますから。

 基本的には残っている魔道具も破壊されている可能性は高いのです」


「なるほど……」

大体の規模感はわかった。

しかし、なんだか違和感があるんだよな。


中央に大きな通りがあり、それから左右に建物があったと思う。

建物はボロボロだし、道もあったのかな?というくらいに植物が生い茂っている。

一部屋根が生き残っている建物で、みんな休憩をしているわけだが……


どっかで見たような……


!!


あ!!


わかった!!


平城京だ!!


上から俯瞰してみると、日本史の教科書に乗ってた平城京に似ているのだ。

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