170日目 異世界-1

「【ホーリービジュア】は今日も使えないと思います。

 それから、感覚的な話ですが、もう回復はしていると思います」

昨日はショーンの父ダーハルトさんを【ホーリービジュア】で回復した。

【回復魔法】を使った感覚では、完全回復したと思う。

しかし、まだ意識は回復していない。


「そうか……」

シトン様が答える。

「あの、この人相当強いと思うのですが、一体何が?」


「そうだな……ちょうど客が来たようだ。

 案内してこよう。

 ここは私がいないと来れないからな」

この地下は、特別な人間しか来ることができない秘密の空間だ。

ここでなら僕の【ホーリービジュア】も誰にもバレずに使うことができる。


ほどなくしてシトン様が戻ってくる。


「ショーン!!」

「ケン!!」

シトン様が連れてきたのはショーンだった。

後ろにはクラール、イヴォンさん、カルディさんもいる。

そしてショーンはすぐにダーハルトさんに気づく。


「父さん……」

「意識はないが、安定はしている。狭間くんが【ホーリービジュア】を使ったからな」

皆がしばらくの間ダーハルトさんの様子をみる。


「事情を話そう」

シトン様はそう言うと、部屋を出る。










「まず最初に、第七戦線が攻略された」

「「「!!!」」」

僕を含む全員が驚いている。

イヴォンさんやカルディさんも知らなかったのだろう。


「あのヒドラが倒されたのですか!?」

イヴォンさんが少し大きな声を出す。

「そうだ」


「ヒドラというのは第七戦線のボスです。

 非常に強力な魔物でしてね。

 我々も若い頃に挑んだのですが、命からがら逃げ帰ってきたのですよ」

カルディさんが僕たちにヒドラの説明をしてくれる。

マジかよ。

カルディさん達が逃げてくるって相当だよな。


「攻略したのはダーハルト達だ」

「なるほど、ではそのときに負傷したということですか」

シトン様の説明にイヴォンさんが答える。


「いや、確かに負傷はしたようだが、現状のものとは違う。

 通常の【回復魔法】で回復できる範囲だ」

「では一体……」


「シャールだ。

 シャールが第七戦線攻略のパーティを壊滅させ、ダーハルトをあのような状態にしたらしい」

「なっ!?」

ショーンが立ち上がり、大きな声を出す。

シャールという人は、確かショーンのお兄さんだったはずだ。


「そんなわけねぇだろ!!」

「そ、それは確かな情報なのですか?」

イヴォンさんもシトン様の言葉に疑問を持つ。


「あぁ、なにしろパーティメンバー全員が証言している。

 しかし、私も信じられんよ。

 第七戦線のボスを攻略したパーティメンバー、ダーハルトを含む全員が、シャール一人に壊滅させられたというのだ」

「ふざけんな!! 兄貴がそんなことするわけねぇだろ!!」

「ショーン、落ち着け。疑問があるなら僕たちで調べればいいだろ」

興奮するショーンをクラールがなだめる。


「しかし、一体なんのために自分の父親を含む人間と戦ったのでしょう?」

カルディさんがシトン様に聞く。

「さぁな。全くの謎だ。しかし、シャールはその後第七戦線から外界方面へ向かったらしい」


「なら決まりだ。俺はすぐに行くぜ」

「無理だな」


「ぁ?」

シトン様にショーンがキレる。

ヤバい展開だ。


「外界へ行くには弱すぎる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る