170日目 異世界-1
「【ホーリービジュア】は今日も使えないと思います。
それから、感覚的な話ですが、もう回復はしていると思います」
昨日はショーンの父ダーハルトさんを【ホーリービジュア】で回復した。
【回復魔法】を使った感覚では、完全回復したと思う。
しかし、まだ意識は回復していない。
「そうか……」
シトン様が答える。
「あの、この人相当強いと思うのですが、一体何が?」
「そうだな……ちょうど客が来たようだ。
案内してこよう。
ここは私がいないと来れないからな」
この地下は、特別な人間しか来ることができない秘密の空間だ。
ここでなら僕の【ホーリービジュア】も誰にもバレずに使うことができる。
ほどなくしてシトン様が戻ってくる。
「ショーン!!」
「ケン!!」
シトン様が連れてきたのはショーンだった。
後ろにはクラール、イヴォンさん、カルディさんもいる。
そしてショーンはすぐにダーハルトさんに気づく。
「父さん……」
「意識はないが、安定はしている。狭間くんが【ホーリービジュア】を使ったからな」
皆がしばらくの間ダーハルトさんの様子をみる。
「事情を話そう」
シトン様はそう言うと、部屋を出る。
◇
「まず最初に、第七戦線が攻略された」
「「「!!!」」」
僕を含む全員が驚いている。
イヴォンさんやカルディさんも知らなかったのだろう。
「あのヒドラが倒されたのですか!?」
イヴォンさんが少し大きな声を出す。
「そうだ」
「ヒドラというのは第七戦線のボスです。
非常に強力な魔物でしてね。
我々も若い頃に挑んだのですが、命からがら逃げ帰ってきたのですよ」
カルディさんが僕たちにヒドラの説明をしてくれる。
マジかよ。
カルディさん達が逃げてくるって相当だよな。
「攻略したのはダーハルト達だ」
「なるほど、ではそのときに負傷したということですか」
シトン様の説明にイヴォンさんが答える。
「いや、確かに負傷はしたようだが、現状のものとは違う。
通常の【回復魔法】で回復できる範囲だ」
「では一体……」
「シャールだ。
シャールが第七戦線攻略のパーティを壊滅させ、ダーハルトをあのような状態にしたらしい」
「なっ!?」
ショーンが立ち上がり、大きな声を出す。
シャールという人は、確かショーンのお兄さんだったはずだ。
「そんなわけねぇだろ!!」
「そ、それは確かな情報なのですか?」
イヴォンさんもシトン様の言葉に疑問を持つ。
「あぁ、なにしろパーティメンバー全員が証言している。
しかし、私も信じられんよ。
第七戦線のボスを攻略したパーティメンバー、ダーハルトを含む全員が、シャール一人に壊滅させられたというのだ」
「ふざけんな!! 兄貴がそんなことするわけねぇだろ!!」
「ショーン、落ち着け。疑問があるなら僕たちで調べればいいだろ」
興奮するショーンをクラールがなだめる。
「しかし、一体なんのために自分の父親を含む人間と戦ったのでしょう?」
カルディさんがシトン様に聞く。
「さぁな。全くの謎だ。しかし、シャールはその後第七戦線から外界方面へ向かったらしい」
「なら決まりだ。俺はすぐに行くぜ」
「無理だな」
「ぁ?」
シトン様にショーンがキレる。
ヤバい展開だ。
「外界へ行くには弱すぎる」
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