168日目 異世界-4

「納得がいっていない、という感じだろうな。

 【騎士】や【聖騎士】のジョブに目覚める者は、そもそも忍耐力が高い。

 だが、それは他のジョブに比べてという話だ。

 そして、外界へ行くためにはステータス以上に圧倒的な忍耐力、持久力が必要なのだ。

 狭間様も外界での戦いに驚いておられた」

トロゲンさんが僕とマッソさんに言う。

「はい。そうですね」

あの完璧に統率された動き。

それから、昼夜を問わず戦い続けるという持久力。


「あの隊は陣形が崩れてはいけないのです。

 自らの疲労を的確に判断し、これ以上はまずいと思ったら、後列へ行って休む。

 そして、場合によっては、戦闘中に食事や睡眠をとる。

 一人が取り乱せば、陣形に穴ができ、そのフォローに4、5人は人員が必要になる。

 それを物資が枯渇するまで続けるのです」

「確かに、尋常ではありませんね……」


「それに対して、訓練時間には限りがあります。

 特に、カウンタースキル習得には、大量の【回復魔法】が必要になるのです。

 時には教会からも人を派遣してもらい、MPが切れるまで続けます。

 ところが……」

トロゲンさんはこちらを見てニヤリと笑う。


「狭間様のMPがあれば、カウンタースキル習得はもちろん、こいつらの持久力を鍛えることができる。

 本日も、是非よろしくお願いします」

「はい!! 頑張ります!!」

「………………(最悪だ。昨日の疲れも抜けきってねぇのに)」









「【エリアハイヒール】!!」

「え? あれ? 昨日は【エリアヒール】でしたよね?」


「はい! おかげさまで昨日【エリアハイヒール】を習得することができました!!」

「………………」

あたりが静まり返る。


「あ、あれ?」

何かしくじったのだろうか。

「い、いや……す、素晴らしい……素晴らしいですね。な、なぁ!?」

マッソさんが周りに同意を求める。


「も、もちろんですよ!」

「ありがとうございます! 頑張ります!!」

「………………」

今日も遅くまで頑張れそうだ。








「いいぞ! やっとるな!?」

あたりは既に暗い。

トロゲンさんが様子を見にきた。


「すみません……そろそろ終了になります」

僕はトロゲンさんに言う。

「おぉ……」

騎士団の方々が胸をなでおろしている。


「さすがの狭間様もそろそろMPが切れますか」

「いえ、夜は完全に眠ってしまうのです。8時間程度、おそらく何をされても起きないと思います」

睡眠時間中は日本にいるからな。

ただ、睡眠時間と日本にいる時間はイコールではない。


「なるほど……最初におっしゃっていた条件の一つですな。

 本日から騎士団の宿舎にお泊まりいただくのはいかがでしょうか?」

「是非お願いします!! それなら起きてすぐに訓練できそうですね!!」

「「「………………」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る