165日目 異世界-2

ドドド……


徐々に地響きが伝わってくる。

大群もそうだが、おそらく1体1体もそれなりに強いだろう。

トロゲンさんは落ち着いているが、大丈夫なんだろうか。


騎士団の最前列が、行進をやめ、大盾を構える。


ん?

大盾が光ったか?

これって【挑発】系スキルだよな。

あの魔物の大群を前に【挑発】系スキルってマジかよ!!


来るぞ!!


ガギンッ!!


大きな金属音と共に、魔物が吹っ飛ぶ。

あれ?

攻撃した魔物が吹っ飛んでいる。


そうだ……

カウンターだ。


「お気づきになられましたか?」

「はい……カウンターですね?」


「そうです。

 カウンタースキルのデメリットは攻撃をされなければ発動できないこと。

 あとは基本的に近距離スキルであることです。

 そして、メリットは消費の少ないこと、高威力であることです」

「なるほど……」


「最前列の人間は、ひたすらカウンターのみを使用します」

トロゲンさんが説明している間も、次々にカウンターが決まっていく。


ん?


最前列の一人が、カウンターを決めた後に、素早く後退する。

そして、後ろに控えていた騎士が最前列へとやってきて、入れ替わる。


「入れ替わっていますね」

「そうです。

 カウンターは消費SPが少なく、受けるダメージも少ないのですが、それでも確実に消費はしていきます。

 SPの自然回復を最大限に活かすため、ある程度の消費で後列の者と入れ替わるのです」


「なるほど」

文句のつけようが無いほど完璧に統率されている。

僕が外界へ行きたいといったとき、最低限の訓練が必要だと言われたことも納得だ。


「これだと、個人の能力値よりも、連携の方が重要ですね」

「その通りです。

 ですから、訓練なしで狭間様がここに入ることに皆、抵抗があったのです」


「そうですね……納得しました」

ミドーさんが外界なめんなと言っていたが、納得できる。

この布陣だと、統率の取れていない個人は邪魔だろう。


「シトン様もこのような説明をしてくだされば、この前のような事態にはならなかったのですが……

 まぁおそらくミドーに試練を与えたかったのでしょうな」

「も、申し訳ありませんでした」

ミドーさんをボコボコにしてしまったことを思い出す。


「いえいえ、正直驚きましたが、サワナ様のお弟子さんということでしたら、皆納得ですよ」

「はい……」

トロゲンさんの顔がひきつっている。

サワナ様が騎士団に対して、何かしらやったのだろうということが、容易に想像できる。


「しかし、凄まじい戦闘のはずが、前線が安定していますね」

「はい。この周辺で前線が崩れることはありません。

 昼夜を通してこのペースを続けることができます」


「えぇ!? 夜中もですか?

 睡眠はどうするんです?」

「はい。

 前線の者はこのペースを保ち、最後尾と側面のものは、周囲を警戒します。

 そして、中央のものはそのまま睡眠をとるのです」


「戦闘中に寝るわけですね……」

「その通りです。

 外界は常に魔物が出現する地域が多数ありますから。

 休憩がしばらくとれないこともあるのです」

まずいな。

僕も参加し続けていたいが、夜は無理だ。

日本に戻るので、確実に睡眠が必要になる。

それも8時間は確実に必要だ。


そして、この陣形に加わることも厳しいだろう。

カウンター主体になるが、僕はカウタースキルを持っていない。

ものままだと文字通りついて行くだけになってしまうな……

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