目が覚めると、いつものように病院の無機質な天井が見える。

しばらく頭がぼーっとする。

異世界から切り替わるときには、いつも意識がもうろうとする。

特に、病室で目が覚めるときはしばらくこんな感じだ。

少しだけしか動かない首を頑張って動かしてみる。

今日も病室には誰もいない。

僕は【風魔法】を撃ち続ける。

しばらくすると、看護師さんがやってきた。

僕はできるだけ一人の時間を多く取りたいので、寝たふりをする。

点滴を取り替えたり、オムツを交換したりしてくれているようだ。

…………

感覚が無いが、排泄はされているらしい。

オムツを交換されているときはどうしても気分が沈む。

【回復魔法】さえ覚えてしまえば、こんな気分を味わわなくてすむ。

しかし、今現在の入院費用などはどうなっているのだろうか？

普通は事故の加害者が負担だよな……

確か、トラックに轢かれたんだ。

だから運送会社が医療費を出しているんだろう。

まぁおそらくは保険会社だろうが。

自転車通学の途中、横断歩道の信号は確かに青だった。

というより、国道で信号無視するほどアホではない。

僕は高校三年だから、受験勉強もしなくちゃいけない。

一刻も早く【回復魔法】を習得しなければ……

それから看護師さんが部屋を出ていったあとに、また【風魔法】をひたすら撃ち続けた。

こころなしか、布団の動き方が大きくなっているような気がする。

【風魔法】のレベルが上がったのだろうか。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい