第22話

「フラヴィ。すまない」


私はそう言い、フラヴィを聖女の横に立たせた。フラヴィには先ほどの話で理解したようだ。口を開くこともなく、頷いた。

そして私は【結界を張れ】と唱えるとフラヴィと聖女の周りをそれぞれ取り囲むように光魔法の結界が現れた。


「さぁ、シャロン。聖女であればこの結界はすぐ解けるだろう?王家は実力主義なんだ。シャロンがフラヴィよりも優秀であれば君を妃に迎えよう」

「本当!? やるわっ!」


私の言葉に反応して結界を叩いて割ろうとしている。結界を解く術を学んでいないのか。そもそもシャロンは回復魔法もそれなりでしか効果がない。どのようにするのか眺めていると、早速フラヴィが結界を解いた。


「流石フラヴィ。私の愛おしい婚約者」


抱き寄せてそう言うと、フラヴィは少し怒っていた。


「もうっ。ツィリル様! こんな弱い結界なんて誰でもすぐ壊せるわ。私を馬鹿にしているのかしらっ?」

「そんな事はないよ。ほらっ、聖女を見てごらんよ。壊されていないだろう?」


二人で聖女を見て笑う。その様子を見た聖女は結界をドンドンと叩き、とても怒っている。その様子が可笑しくて仕方がない。


「聖女シャロン。分かったかい? 君は光魔法がほんの少し使えるだけ。私もこうして聖女と同じ光魔法を使う事が出来るんだ。もちろん回復魔法も使えるし、こうして結界や解毒、呪いを解く、攻撃魔法も使える。同じ光魔法は要らないし、さらに弱い魔力の者を取り込むメリットが王家にはない。分かったならここから出て行ってもらおう」


私の言葉に護衛騎士が動き、聖女を強制的に庭から追い出した。


「フラヴィ、私は全ての民に祝福されるように頑張るよ」

「私も頑張らねばなりませんね」


二人でそう笑い合った。



そうして待ちに待った結婚式。


ウエディングドレスを着たフラヴィは本当に美しかった。


「フラヴィ、私と結婚してくれて有難う」

「ツィリル様、これからも宜しくお願いしますね」


私達はそう誓いあい、王都の街の会場へと姿を現わした。


「今日、この日のために皆、集まってくれたことを嬉しく思う。これから私達は王国の発展に尽力することを此処に誓う。これは私と妃からの贈り物だ。どうかこれからも私達を支えて欲しい」


そう広場で宣言した後、【この場に居るものを癒せ】と唱える。フラヴィは【花よ降り注げ】と唱えた。

すると会場中に白い花びらと共に淡い光が空から降り注いだ。

会場中がドッと歓声が響き渡る。これは二人で用意していた国民へ向けたサプライズ。


会場は人混みで溢れているため一人一人回復魔法の効果は薄いが、魔法を目にしたことのない平民達は驚きと喜びで大歓声となっていた。


癒しの象徴である聖女との婚姻を望んでいた者も多くいたので今日を境に聖女との婚姻と言わなくなるだろう。


私達の目論見も大成功だった。

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