昔一緒に遊んでた吸血鬼の男の子が学校の王子様になって溺愛してきます
無月兄
第1章 学校の王子様は吸血鬼
第1話 学校の王子様は吸血鬼
「転校してきた、
クラス全員の視線が集まる中、簡単に自己紹介をすませる。
こういうのは、短くわかりやすく。下手に面白いこと言おうとして滑ったら地獄だからね。
高校二年生の二学期。こんな中途半端な時期に転校してきたのは、お父さんの仕事の都合。
私のお父さん、数年前に転職したんだけど、そこが転勤の多いところで、私もそれに合わせて転校することが時々あるの。
だからこんな自己紹介ももう慣れっこ。
だけどこの学校はともかく、この街は、初めての場所ってわけじゃないのよね。
「ねえ、もしかして瑠璃? 私のこと覚えてる?」
朝のホームルームが終わったところで、一人の女子が話しかけてきた。
その顔を見て、すぐに懐かしい名前が浮かんでくる。
「えっと、
「当たり。よくわかったね。こっちに戻ってきたんだ。何年ぶりだっけ」
「この街から引っ越して行ったのが小五の時だから、六年ぶりかな」
まだ小学生だった頃、私は一度、この街に住んでいたんだよね。
今話しかけてきた
もしかしたら、昔の知り合いが同じクラスにいるかななんて思ってたけど、文がいてくれるなんてラッキー。
「六年前って、もう大昔じゃない。野猿って言われてた瑠璃もJKになったか」
「JKなのはお互い様でしょ。って言うか、野猿って呼ばれるの久しぶりすぎて、一瞬何言ってるのかわかんなかったじゃない」
文の言う野猿ってのは、私が小学生の頃のあだ名。
とにかく体を動かすのが好きで、暇さえあれば外に出て遊び回ってたことや、時々男子と取っ組み合いのけんかをしていたことが理由でつけられたんだよね。
「そういえば瑠璃、昔は空手習ってたけど、まだやってるの?」
「それが、前いた高校では空手部もなかったから、やめちゃったのよね。けど、今でも運動はしてるよ」
シュッと正拳を突き出すポーズをすると、文はおぉっと声をあげた。
「野猿や空手を卒業しても、瑠璃は瑠璃か」
「そういう文こそ、あんまり変わってないんじゃないの」
六年ぶりだってのに、ほとんど昔のままのノリで話す私たち。
そうこうしているうちに授業開始のチャイムが鳴るけど、文とは休み時間になる度にお喋りして、昼休みになった時も、すぐに文がやってきた。
「ねえ文。私、お昼は学食で食べようと思ってるんだけど、どこにあるの?」
「私もお昼は学食だから、一緒に行こうか。この学校、広いし形が複雑だから、どこに何があるかわかりにくいのよね」
「それ、先生にも同じこと言われた」
なんでも、この学校の校舎は有名な建築家がデザインしたものらしくて、外観はとってもオシャレ。
それはいいんだけど、そのおかげで教室や諸々の設備の配置が、非常に独特になっているらしいの。
今日転校してきたばかりの私じゃ、すぐに迷子になりそう。
「見た目がオシャレなのはいいけど、けっこう不便なところもあるのよね」
学食に向かう途中で、文がぼやく。
見た目よりも実用性。校舎をデザインした有名な建築家の人には悪いけど、ずっと通ってる文からしたら、そんなものなのかも。
「今日の放課後、学校の中を先生に案内してもらうことになってるんだ」
「そうした方がいいよ。でないと、本当に迷うからね」
そうなの? なんだか思った以上に大変そう。
だけどオシャレなのは確かだし、私はまだ珍しいって思えるから、ついあちこちに目がいっちゃう。
その時だった。
「キャーーーーっ!!!」
突然、廊下の先から、女の子の声が聞こえてきた。
しかも、一人じゃなくて何人もの声だ。
見ると、廊下の先はちょっとした広間になっていて、何人もの人が女子が集まって騒いでた。
みんなキャーキャー言ってるけど、悲鳴というより歓声っぽい。
「ねえ、文。なにあれ? あんなところにアイドルでもいるの?」
もちろん、アイドルなんて冗談だけど、それを聞いた文は、意外なことを言い出した。
「似たようなものかな」
「へっ?」
なにそれ? もしかして、本当にアイドルがいるの?
「あれはね、簡単に言うと、イケメン見物」
「イケメン?」
「そう。瑠璃は知らないだろうけど、うちの学校には超イケメンの男子がいるの。ほとんどの女子はその子に夢中で、時々あんな風に女子生徒が集まってくるのよね。ちなみに、私たちと同じ二年生で、隣のクラスだよ」
「いや、でもさ。イケメンって言っても、芸能人でもなんでもないんでしょ」
私が前に通っていた学校でも、かっこいいって言われる男子は何人かいたよ。
けどだからって、こんな騒ぎになったりはしない。
いくらイケメンだからって、そんなことある?
「いやいや、それが、ただのイケメンじゃないの。顔はそんじょそこらのなんちゃってイケメンとは比較にならないし、成績優秀、運動も得意、生徒会役員やってて、さらに物腰柔らかで誰にでも優しい超紳士っていう、パーフェクトな王子様なんだから」
「そんなに凄いの!? って言うか、そんな人間実在するの?」
なんだか文の話を聞いてると、凄すぎてリアリティがないんだけど。
そしたら文は、ニヤリと笑ってこう言った。
「人間とは違うかな。なんたって、彼は吸血鬼だからね」
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