第12話 多分自分はお母さん
それは気温も上がり谷崎は卑弥呼から解放されて、朝ご飯を食べていた時。
「村は大丈夫ですかね?」
「そうじゃな。風もだいぶ収まってきたし、食事を終えたら外を見てみるか」
「はい」
朝ご飯を食べ終え、一回将棋をして案の定谷崎は卑弥呼に負けた後。
「よし、少し様子を見に行くか」
谷崎は卑弥呼と一緒に外に出た。
「ありぁ、びちゃびちゃじゃの」
道は台風の影響でぬかるんでいた。すこし歩いていると見覚えのある男性が道に土を被せている。
「ああ、あなたは」
「お、君か」
「今は何をしているんですか?」
「見ての通り道がぬかるんでいるから土を被せているんだよ」
男性は道に土を被せているのを指差す。
すると、谷崎の横から卑弥呼が顔を出す。
「有難うな。道を綺麗にしてくれて」
「いえ、みんなの為ですので」
「わらは達は村に被害がないか確認をしてくる。頑張ってな」
「はい」
二人は歩き出す。そして男性が言う。
「頑張ってください」
「おう」
卑弥呼は田んぼに行き、そこで作業をしている人に声を掛ける。
「おーい。何をしてるのじゃ?」
「稲の確認と雑草取りをしていました」
「稲はどうじゃったか?」
「卑弥呼様が台風が来ることを教えてくれて対策をしたので大きな被害はないみたいです」
卑弥呼は笑顔で言う。
「そうかそうか!そうだ、草取りわらは達も手伝わせてくれ」
「良いのですか、卑弥呼様」
「勿論じゃ」
「ではお願いします」
谷崎と卑弥呼は靴を脱ぎ田んぼに入る。
「うわ!冷たいのう!」
「久しぶりに田んぼに入りました」
足を慣らしていき卑弥呼は言う。
「良し!始めるか」
田んぼに生えている雑草を取っていくこと数時間。
「んー腰が痛いのう……わらはも歳かの」
「まだそんな歳じゃないですよね」
「あはは!そうじゃった!」
谷崎と卑弥呼は笑っていると一緒に草取りをしていた40代ほどの女性が近づく。
「卑弥呼様のおかげで、だいぶ綺麗になりました。ありがとうございます」
「これくらい、どうってことないわ!」
そして、谷崎にも言う。
「君も手伝ってくれてありがとう。綺麗に草取り出来ているわ」
「あ、ありがとうございます」
女性は谷崎に尋ねる。
「ご結婚はなさっているのかしら?」
「?していませんが」
女性は笑顔になり、
「将来有望だわ。あなたが良ければの事だけど私の娘と結婚してくれないかし……」
「おおっと!わらは達は用事があるんじゃ!先に失礼するな!ほら晴人、行くぞ」
卑弥呼は谷崎の手を握って田んぼから出て行く。
「ああ、ち、ちょっと引っ張らないで!」
「足洗いはあっちにあるわ!……行っちゃった。……でも卑弥呼様の感じ……これは将来が楽しみだわ」
女性はそう言い、笑う。
二人は足を洗った後、家に戻り一息つく。
「ふう……特に問題が無くて良かったな」
「そうですね」
卑弥呼は谷崎を見ると顔が泥で汚れている事に気づく。
「晴人!顔が泥で汚れているぞ」
「え?」
卑弥呼は麻で出来た布切れを取り出し泥を拭き取る。
「もう、どうしたら顔に泥が付くのじゃ」
「すみません…………あはは!」
谷崎は卑弥呼を見て笑った。
「なんで笑っておるのじゃ?わらはの顔に何か付いているのか?」
「付いてるも何も卑弥呼さんの顔にも泥が付いてますよ」
「そ、そうなのか!?」
「どうしたら顔に泥が付くんですか?」
卑弥呼の顔は赤くなる。
「もう、いじわるしないでくれ……そうだ顔を拭いてくれ!」
「……自分で出来ないですか」
「さっき拭いてあげたじゃろ。ほら」
卑弥呼は先程晴人の顔を拭いた布を渡し、顔を指差す。
「はぁ……」
谷崎は布を受け取り卑弥呼の顔の泥を拭き取る。
「いいなあ、これも!安心するのう」
谷崎は思った。実は自分は卑弥呼の母親だったんじゃないかと。
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