サイキック怪盗少女が洗脳されちゃった警察官幼馴染を意識しちゃう話 短編版
冬月 蝋梅
サイキック怪盗少女が洗脳されちゃった警察官幼馴染を意識しちゃう話
前書き
息抜きに書いたものです。
前書き終わり
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ビー!!ビー!!
「泥棒だー!!」
「追え、あそこだー!」
ビルの中を、警備員が駆け回る。
厳重に守られたコレクションルームから曰く付きの宝石を盗み出された。わざわざ予告状まで出されたのに後ろめたいところが多い主が警備員を配置するだけで済ませたことで、被害は出てしまった。
「銃を使え!!」
「無理です、バリアにはじかれます!」
「クソ――、あの女が噂の…」
屋上のヘリポートから歯を食いしばる警備員たちの視線の先にあるのは、一人の黒いの背中。
黒いシルクハットから除く赤い髪。紫のアイマスクで隠された顔。そして黒い燕尾服を着ても分かるセクシーさがある少女は、何より空中を歩くという奇妙な現象を起こしていた。
それが巷を騒がせる怪盗ウォーカーことミヨの姿だった。
「らっくしょ~。イヤー、ご苦労様なことで…」
そう『怪盗の余裕』のため歩いていたミヨの耳に、銃声が聞こえてくる。それは警備員たちが発砲している証。だが銃弾はミヨの元には届かず、直前ではじかれる。
【サイキック】___近年世界中に現れた特殊な能力を持つ者たちの総称。その確率は500万人に一人と言われており、どれだけ弱くても素質があるだけで保護の対象だった。そしてミヨは、そんなサイキックの中でも五指の指に入るほどの多彩さを持った人間だった。
「さてあとは、ここから帰るだけ…」
「待ちなさい」
そう言われたミヨの後ろに、人影があった。
特別捜査官のバッジが付いた女性警察官の制服。帽子からのぞく黒髪の短髪。何より眼鏡をかけたその青い瞳は、すべてを切り裂く鋭利さを合わせていた。
「シー…シロン捜査官か」
彼女はシロン。警察庁特別捜査班付の捜査官であり、ミヨと同じサイキックだ。
「今度こそお縄についてもらうわ、怪盗ウォーカー」
「…あのビルの警備員の発砲は?銃刀法違反でしょ?」
「私の仲間が向かっている。私はその分お前に注力できるということよ」
そう言うとシロンは両手に二つの手錠を出現させる。
「…今度こそ」
「そんな力んでも捕まらないよ~だ」
「黙れ!!」
シロンは叫ぶと同時、体から電撃を発生させてミヨにあてようとする。だがミヨは余裕で避けると、腰から短刀を出してその刀身に冷気を宿す!!
「怪盗M!!建造物侵入及び窃盗の現行犯で逮捕する!」
「は、捕まえてみな、捜査官様!!」
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「…で、また逃げられたと」
「申し訳ありません」
某警察署内『怪盗ウォーカー特別捜査本部』で、山田警視正にシロンは怒られていた。
「…やつが盗んだ宝石は、何とか奪還できましたが…」
「デコイに気を取られたの間違いでは?」
あの空中決戦の途中、急に投げられた宝石に気を取られ、『姿隠し』の能力で逃げられたのだ。
「…だが、これであのビルの主を逮捕できるだろう」
そうつぶやく山田。裏でこっそりマークしていたとはいえ、怪盗ウォーカーが狙うのは犯罪人だけという今までの例があるから言えることだろう。
「…下がっていい、英気を養え」
「はっ!!」
そう言うとシロンは、捜査室の所定の位置に戻っていく。途中で署のかかわりの薄い警察官と遭遇するが、気味の悪い目で見られていた。
(彼女ほど強力なサイキックだと、なじみが薄いからなぁ)
山田はその光景に内心複雑になる。むしろ貴重な飛行能力を持つ彼女以外誰もウォーカーを追えないので、チームの唯一の現場戦力といっていい。それでもさらされる偏見に、人のいい山田は心苦しかった。
(まぁ、彼女は経歴不明だからなぁ)
国内の人身売買組織を壊滅させたときに救出された少女たち。その中で記憶を消され、ロボットのような性格にプログラミングされていた前歴不明の戦闘員__コードネーム【シロン】を、警察庁が雇った経緯があった。
ゆえに、局内でも煙たがれるなか、この怪盗捕縛に駆り出されてから幾数回。彼女の性格もつかめてきたところだ。
(しかし、シロン以上に強力なサイキック少女__怪盗ウォーカーは何者なのだろうか?)
怪盗ウォーカー。かなりの種類の能力を持つのは確定している。しかし、国のデータベースのどこにもヒットする部分がない謎の多いサイキック。最初のころは即逃走を選ぶ逃げ足の速さが厄介なところだったのだが…
(最近はシロンの相手を率先してやるようになった気配もする__何なのだろうか?)
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「ふぃ~、疲れた~」
あの後結局、わたしはシロンの相手を適当にしてから帰路に就いた。ほかの追っ手はいないので、適当なところで仕事装束を着替えてジャージに着替える。そして今は住んでいるマンションに戻っていた。
「しかし、最後のは危なかった…」
あの雷撃を集めた一撃を貰ったら、わたしだって死んでしまう。そうなったらシロン__シーちゃんも悲しむだろう。
「…シーちゃん」
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わたしことミヨは、昔とある特殊な村の少女だった。代々サイキックの生れやすい家系ばかりで作られた村で、世間から隠れるように生きていた。そんな村の中で同年代の中で唯一の同性だったのが、シーちゃん__シノだった。
『ミッちゃん。今日は川まで行こう!!』
『え~、濡れちゃうよ~。昨日まで雨だったし…』
『何か流れてきてるかもしれないよ?』
『う~ん、でもぉ…』
子供ながらに明るかったシーちゃんと、引っ込み思案だったわたし。当時はこんな日がずっと続くと思っていた。でも…
『シーちゃん!!シーちゃん!!』
『いたっ、離して!!』
『隊長!!ほかの村人は始末しました!!』
『よし!このまま帰投するぞ!!』
『シーちゃん!!シーちゃぁぁぁん!!!』
ヤツラが村を襲った。大人はみんな殺され、他の子どもたちも殺された。唯一シーちゃんだけが連れ去られてしまった。わたしは木に縛られて、火あぶりにされるところだった。
『…大丈夫か!?』
運よくサイキックの裏のコミュニティに属していた師匠が来なければ、わたしも死んでいたところだろう。
『みんな…みんな…』
『…ミヨ、オレと一緒にこい』
そうして故郷をなくし、師匠と渡り歩く日々。その中で見たのは、ヤツラの脅威にさらされるサイキック仲間たちだった。
『…師匠、わたし、力を手に入れたいです!みんなを守るための力を!』
『…それが修羅の道だとしてもか』
『だってわたしは、もう後悔したくないから!!』
そうして修行をし、その過程でヤツラのコネクションにダメージを与える日々。その果てに、ヤツラを倒すことができた。
『…お前はもう十分立派だ。これからは普通の少女として、お前自身の幸せを謳歌するといい』
『師匠!!』
『たまには見に来るからな!!』
そうして普通の高校生として人生をやり直そうと思った矢先…
『…ヤツラの残党がいます』
『なんですって!?』
そう言われて知ったのは、社会の有力者たちによるヤツラの延命処置。
『…だったらやってやる!』
そうして始めた怪盗としての仕事の中で、出会ってしまった。いや、再会してしまった。
『私は特別捜査官のシロン。おまえに引導を渡すものだ』
『…え、シー、ちゃん?』
『なんだそのクソみたいな呼び方は!!捜査官様と呼べ!!』
一目見ただけでシーちゃんとわかった。なのに、シーちゃんにはその記憶がなかった。
『お前を逮捕する!!それが私の役目だ!!』
『…っ、やるしかないか!』
そうして始まった追いかけっこ。再会の幸せを一瞬で不幸に変えたそのやり取りの中で、わたしは___
***********************************
『お前を豚箱にいれてやる!!』
「あ~、その表情いいよシーちゃん♡!!」
限界化してしまった。
だって、もともとわたしより一つ年下なのにお姉ちゃんみたいだったシーちゃんが、凛々しい美少女になって毒舌を吐いているんだよ!!しかも強い!!
『きさまーーーー!!』
『へへ、ここまでおいで~』
「あぁ、そのまま雷撃当てればいいのに!後ろのビルに気を使ってるなんて♡!」
ただいま服に仕込んだビデオカメラで撮っておいた今日の戦闘を鑑賞中。ぶれないように特注したカメラの性能は、今日もシーちゃんことシロン捜査官をばっちりとらえていた。
『…その短刀!いい加減手放せ―!!』
『いやだっつ~の!』
「あぁ、カメラが袖の影に!!わたしのバカぁ!!」
一通り見終わったところで物置兼作業部屋兼コレクションルームを出る。明日も早いから、早めに寝なければ…。
「えへへへ、シーちゃん♡、シロン♡、捜査官さまぁ♡…」
今日の夢見もよくなる。そう独り言ちながら急ぎシャワーを浴びに行くのだった。
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ぶるぅっ!!
「どうした…?」
「いえ、なんか悪寒が…」
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後書き
気が向いたんで作った短編です。
…何も言うな。連載あるのに何てもの書いてるんだろう私は…
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