第21話

7月 梅雨明け 猛暑  木曜日

仕事帰りバスの中で久しぶりに昭和のお節介おばさんと遭遇した。

歳の頃は私とどっこいどっこいか もしかしたら若いかも。


そもそも、このバス会社7月にダイヤ改正をした時 バスの運行本数を減らした事で今までにない混みようである。いわゆる人手不足なのか? ホント?

この日もすごい混みようだった。私はいつも わりとバス待ちの長蛇の列の前列に並べる。 と、云うのもダイヤ改正のせいでバス発車時刻まで15分は待たなくてはならなくなったから。ダイヤ改正以前は5分も待たずに乗れた。乗車率はいつも50パーセント前後、もしかして本当の原因はこれ? こうなったら電車のダイヤ改正を待つしかないが おかげで帰宅時間が15分も遅くなった。

帰宅が夜の10時から10時15分になった。たったの15分だがすごく損した気分になるのは性格だから仕方がない。     …… へへ ……


話を戻そう。

私が座れたシートは乗り口左側 横三列に並んだシートで乗り口側、隣席(真ん中)に50歳くらいの男性。その隣、運転席近くのシートに座っていたのが件の女性である。 この三列のシートは確かに優先席だが 夜の9時に、まさか杖をついた老婆が乗って来るとは…… でも、50歳代のまだ若い女性が杖をついて歩いている姿も

ボチボチ見かけるからもっと若かったかもしれない。

ここでは敢えて老婆と言わせてもらうが、70パーセント混みの車内に乗り込んできて私たちの前を通り過ぎ 運転席近くに移動していった。

乗客はどんどん増えて もはや90パーセントを超えたあたりで件のお節介おばさんがスマホをいじっている隣の男性(真ん中)に いま、足の悪い人がいたから席を譲れと言い出した。 え?と云った顔で男性が立って杖の老婆を目で探したがすでに車内は100パーセントを優に超えていた。前も後ろもぎゅうぎゅう詰めである。

お節介おばさんは席を立った男性に 前に行ったから声をかけてとか、見当たらないなら座っていいですよ、とか…………アンタ何様?

結局 男性は意地になったのか不承不承立ったままスマホをいじり出し、ポッカリ空いた席には後から乗ってきた中年男性が座った。 この一部始終を目撃した私と、

私の前に立っていた二人の男性が「おやおや……」と云った表情でその空間だけシラケ切っていた。お節介おばさんが辺りをキョロキョロ見回した時、おばさんをジッと見ていた私と目が合った。キツい視線を浴びせる私と前に立っていた二人の男性の不快そうな顔に耐えられなくなったのか狸寝入りを始めた。 バスが走り出し、立たされた男性は10分程すると舟を漕ぎ始めた。


あのね、席を譲る親切心にケチをつけるつもりは毛頭ありませんよ。でもね、人に指図をする前にご自分が真っ先に立って声掛けをするべきじゃないでしょうか?

自分は座ったままで、口先だけでたまたま隣に座った人に指図ってアリエナイから。

男だって立場によってはとても疲れているのよ。

この男性がとても大人しい方で良かったですね。

と、云う訳でお節介おばさんの顔は私の記憶に刻み込まれた。

    ヴァァァ~~~~刻みたくないよ~~~~




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る