誰も知らないPBM(プレイ・バイ・メイル)の世界

岡本紗矢子

文字でアクションし、物語で楽しむRPG「PBM」


「このお話にもし私がいたら、こういう行動をするのに」

「この世界、このストーリーに、こんなキャラクターがいたら面白そうなんだけどな……」


小説やマンガを読んでいて、こんなふうに思ったことはありませんか?

私はあります。

ではもし本当に、物語の中に自分のキャラクターを投入できたり、自分がしたい行動をキャラクターにさせることができたりしたら、どうでしょう?


実は、かつて、それができるゲームがありました。

「PBM」――プレイ・バイ・メイルです。


PBM、ご存じの方、いらっしゃるでしょうか? 今となってはほとんどピンとくる方はいないと思います。

これは大ざっぱに言えば読者参加小説のひとつ。

もう少し踏みこんで言えば、多人数参加型のロールプレイングゲーム。

今でいう、オンラインのオープンワールドRPGに近いシステムを、小説という出力方法で実現したものでした。


具体的には、プレイヤーは自分の分身となるキャラクター(PC:プレイヤーキャラクター)を作り、そのPCの行動を指定するという形で、ある世界のある物語にかかわるのです。

PCの行動結果を判定するのは「マスター」です。マスターは多くのPCの「こうします」という行動を読み、その成否を判定して、結果を小説や記事のような文章にまとめて出力します。

プレイヤーはその物語を読んで、PCの次の行動を考えます。これを繰り返すことで、自分のPCも含む「登場人物たちの群像劇」を動かしていくのです。


ちなみにプレイ・バイ・メイルというのはなぜかというと、PCの行動指定を送るのは郵便やメールであり、結果もまた郵便やメールで受け取るゲームであったから。起源は、遠く離れて住む人どうしが手紙を使って対戦する「通信チェス」……とする向きもありますが、ま、これはたぶんこじつけでしょう。


私はかつて、オタク女子の友人に誘われてプレイヤーを経験し、その後、商業PBMのマスターに転じて、何年か活動しました。

まあ……なんていうかすごくコアな世界で、まあまあ黒めな歴史だよなと思う半面、こうも思い始めています。

ふたたびマスターとして、誰かと一緒に物語世界を動かしてみたい、と。


そこで、ここではその野望実現のためのひとつの布石として、PBMの特徴や魅力を私なりにまとめるとともに、後半では(可能なら)模擬PBMのようなものを動かしてみたいと思います。


ご興味があれば、この先もぜひお付き合いくださいませ。



※なお、かつてのPBMに似たサービスとして、現在はPBW(プレイ・バイ・ウェブ)というものがあります。

文字でやりとりし、小説的に結果が描写されるゲームという面では同じで、PBMの正統後継者にして発展版と考えてもいいのですが、個人的にはやや楽しみ方が異なるもののように見えています。したがって、ここではあくまでもオールドなPBMまたはPB e_mailを対象としてまとめていくということを、お含みおきいただければと思います。

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